約 3,642,940 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2330.html
寒くてゆっくりできない場所。それが目が覚めた子供のれいむが周りを見渡してみた感想だった。 気がついたらここにいた。確か自分は、さっきまでおかーさんとおとーさんと妹たちとおうちでお歌を歌っていたはずなのだが。 ここはどこなのだろうか?何故か頭とあんよに違和感を感じる。ゴツゴツとしたものが付いてる気がした。 「ゆ・・・だれかいるの?ゆっくりしないでへんじしてね!!!」 不安に駆られたれいむは大声を出した。するとどこからか返事が返ってきた。それも4つ 「ゆゆ!おねーしゃん?れーみゅはここにいるよ!」 「おねーちゃん!ゆっくりしてるよ!」 「ありちゅはこんなへんぴなばしょじゃゆっきゅりできにゃいよ!」 聞き覚えのある声だった。間違いなく自分の妹たちだ。 「わからないよ。でもみんながゆっくりしていてよかったよ!みんなであつまろう・・・ゆ?」 そういって声のする方へ向かおうとして、初めて体の異変に気づいた。どれほど動こうとしても、体が動かないのだ。 まるで地面に固定されてるような感覚。横も向けずただただ正面を向くだけだ。 「ゆゆ!どうしてうごけないの!」 ガタガタと揺らすが何度やっても効果はなかった。そしてこれは妹たちも同じだったようだ。 「どうちてうぎょけないの!!!!」 「れいむうごけないよおおおお!!!やだおうちかえりたいいい!!!」 「ときゃいはのありちゅがどうちてええええ!!!!」 泣きだす妹たち。本来ならば姉の自分が宥めるのだろうが。そんな余裕はなかった。ただ自分の状況を把握しようとしていた。 「ほかにだれかいるの!おとーさん!おかーさん!」 いくら呼びかけても妹たちの鳴き声以外に聞こえる物はなかった。 前方から光が延々と漏れていた。ただ妹たちは泣き疲れ寝ていた。そして自分もお腹が空いてきた。 「ゆ・・・はやくあいたいよ・・・みんなのかおがみたいよ・・・」 とにかくこの暗闇が嫌だった。前方だけに光があるが、横は真っ暗なために妹たちの顔も見れないのだ。 唐突にガチャっと音がした。それと同時に目の間に大きな手が現れた 「ゆ?だれなの?」 それは人間の手だった。その手は何をするわけでもなく、ただ自分たちの目の前に白い塊を置いてくれた。 そしてまたガチャンと音がした。ぴかーんだの、ピコピコだのうるさい音が流れ始めた。 「うるちゃいよ!れーみゅねむれにゃいよ!」 「おねーしゃんたち!このちろいのおいちいわ!ペーロ、ペーロ、ちあわちぇー!」 ありすがそう言うとみんながいっせいにそれを舐めはじめた。 「ペーロ、ペーロ、ちあわちぇー!」 「ゆ!れいむこれしってるよ!かくざとうっていうんだよ!ぱちゅりーがいってた!」 「ゆ!おねーしゃんちゅごいね!さすがれーみゅのおねーしゃんだね!」 「ゆっへん!」 みんなが目の前の角砂糖に夢中になっていた。しかし食べ終わると、またあのうるさい音が気になり始めた。 「こんなへたなおんがくをながすなんて!ここはゆっくりできないところだね!」 そうやってみなが文句を言っていた。 それからいくらかたった頃、突如大きな声が聞こえた。 「ここはれいむたちのゆっくりプレイスだよ!ばかなにんげんさんはごはんをおいてゆっくりしないできえてね!!!」 「ゆゆ!なにいってるの?ここはれいむたちがさきにいたんだよ?ばかなの?しぬの?」 次女のれいむがおうち宣言に真っ先に反応した。 それと同時に何かが動きだす音がした。ギーガチャっという動きと共に、突然地面が動きだした 「ゆ!だれなの!おさないでね!れいむおこるよ!」 しかしその『誰か』はそんな抗議を無視してドンドン地面は動いていく。れいむは自分の意思と無関係に前へ進んでいった。 暗闇を抜け目の前に見えたのは、母親でも父親でもなく、手に何かを持った人間だった。 そして人間はその手にもったものを自分に目がけて振り下ろした。 「ゆげぇ!」 ピコ!っという音と共に頭に痛みが走った。 「ゆ!なにするのにんげんさん!ゆっくりあやま・・・」 人間に起ろうとしたが、何故か自分はどんどん後ろに下がっていた。そして最後まで言えずに元の位置に戻っていた。 そして初めて妹たちも同じ目に合っていることに気づいた。 「いぎゃい!れーみゅになにちゅるの!」 「どがいぎゃ!ありちゅになにぢゅ!」 「おにーさんやめてえ゛え゛え゛え゛!!!!」 何度怒ろうが、謝ろうが、体は勝手に前に進みそのたびに頭を殴られた。 時には素手でなぐられた。たまに殴られない時があるのが救いだった。 そうしてみんなが元の位置に戻った。聞こえるのは泣き声だけだった。 「いぎゃいよおお・・・・みゃみゃとぴゃぴゃはどうちてたちゅけてくれにゃいの・・・」 「こんなゆっくりできにゃいとこありずいやあ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「もうおうぢがえるううううううううう!!!!」 「おねがいだからゆっくりさせてえええええええ!!!」 何が起きてるのかただ分からずに、泣きだした。 するとまたしても先ほどの声が聞こえた。 「ここはれいむたちのゆっくりプレイスだよ!ばかなにんげんさんはごはんをおいてゆっくりしないできえてね!!!」 そしてまた殴られる 「ここはれいむたちのゆっくりプレイスだよ!ばかなにんげんさんはごはんをおいてゆっくりしないできえてね!!!」 また殴られた 「ここはれいむたちのゆっくりプレイスだよ!ばかなにんげんさんはごはんをおいてゆっくりしないできえてね!!!」 また殴られた 「ここはれいむたちのゆっくりプレイスだよ!ばかなにんげんさんはごはんをおいてゆっくりしないできえてね!!!」 また殴られた 「ここはれいむたちのゆっくりプレイスだよ!ばかなにんげんさんはごはんをおいてゆっくりしないできえてね!!!」 また殴られた「ここはれいむたちのゆっくりプレイスだよ!ばかなにんげんさんはごはんをおいてゆっくりしないできえてね!!!」 「ここはれいむたちのゆっくりプレイスだよ!ばかなにんげんさんはごはんをおいてゆっくりしないできえてね!!!」 また殴られた「ここはれいむたちのゆっくりプレイスだよ!ばかなにんげんさんはごはんをおいてゆっくりしないできえてね!!!」 「ここはれいむたちのゆっくりプレイスだよ!ばかなにんげんさんはごはんをおいてゆっくりしないできえてね!!!」 また殴られた「ここはれいむたちのゆっくりプレイスだよ!ばかなにんげんさんはごはんをおいてゆっくりしないできえてね!!!」 「ここはれいむたちのゆっくりプレイスだよ!ばかなにんげんさんはごはんをおいてゆっくりしないできえてね!!!」 「もういやああああああああああ!!!!ゆっぐりじだい゛い゛い゛い゛い゛!!!!!!」 俺は最近近所にできたとあるゲームセンターに行ってみた。 内装はあまり普通のゲーセンと変わらなかった。しいて言えばメダルゲーが4割を占めているところか。 格ゲーや音ゲーがあまり目立たない端の方に置いてあるのを見て何か悲しくなった。 店内をうろついてると、人の列を見つけた。結構な人数が並んでいた。何か新しいのでも入ったのだろうか。 俺はとりあえず列に並んでみた。そして列から顔を出して前を見ると、そこに一台の機械があった。 『ゆっくりパニック~ゆっくり叩いていってね!!!~』 そう書かれたディスプレイには得点が記載されていた。そして『注意※あんまり強くゆっくりを叩かないでね!!!」と書かれていた。 それ以上前がよく見えなかったので見るのをやめた。ただプレイし終えた人達が嬉しそうな笑みを浮かべていたのはわかった。 30分は並んだろうか。やっと自分の番になった。台の前に立った俺は台を眺めた。 目の前には5つの穴が開いていた。そして手前には畑らしき絵が描かれてた。そして脇にはピコピコハンマー それでルールは把握した。このハンマーで穴から出てくる何かを、畑に入る前に叩くのだろう。 そういやこんなゲームが昔あったなあ・・と思いでに浸りつつコインを入れる。1プレイ200円だった。 コインを入れると同時に、 「ここはれいむたちのゆっくりプレイスだよ!ばかなにんげんさんはごはんをおいてゆっくりしないできえてね!!!」 といった声が聞こえた。いよいよゲームスタートだ。 俺はてっきり中からゆっくりの機械でも出てくるのかと思ったが、それは大きな間違いだった。 穴の中から出てきたのは本物のゆっくりだった。 「おにーざんゆるじでえ・・・」 頭にボタンのような機械を付けたゆっくりれいむだった。頭の上は何度も叩かれたのだろう、黒く変色していた。 俺はとりあえず叩いてみた。できるだけ優しくだが 「いぎゃ!!!」 か細い声をあげて穴に戻っていくれいむ。それから時間まで同じ事を続けた。 出てくるゆっくりはみな元気をなくしていた。中には涙目でこちらに助けを求めるゆっくりも居た。 俺はプレイしおえると、そこから少し離れて、他人のプレイを観察することにした。 あるものは注意書きを無視して、餡子が出るほど強く叩き、あるものは複数人で叩いた。 ある男はコイン投入口脇のボタンを操作してた。どうやら難易度を変えれるらしい。 高速で動きだしたゆっくりは 「ゆっくじざぜでえええええええ!!!!」 と言いながら高速で叩かれていった。 俺はあのゆっくりが気になったので店員に尋ねてみた。店員は忙しそうにも関わらず丁寧に答えてくれた。 「あああれですか。一昨日入ったばっかのででしてね。中のゆっくりはちょっといじってあるんですよ?」 「いじるってどこをですか?」 「まずはあいつらの足をスライドレールに固定するんですよ。んで動くようにして、後は頭にセンサーを取り付けるんですよ。 これで前後の動きや、殴られた時の後退を制御してるんですよ。 中々人気あるんすけどね~難点はほら、生物でしょ?餌がかかるんですよ。それに加減をしらないお客さんがいっぱいいると すぐに死んじゃいますし。一応予備は居るんですけどね。」 「はあ、わかりました。ありがとうございます」 俺はお礼を言うと、そのままゲーセンを出た。今日のブログのネタにでもしようかと思いながらそのまま帰った。 ゲーセンの店長は奥の休憩室にいた。そこで二つの饅頭をお茶請けにお茶を楽しんでいた。 怒りと絶望に包まれた顔のままの饅頭は非常に美味かった。昨日練習したゆっくりの取り付けの副産物だった。 なんでもこのゲームのゆっくりは取り換えが簡単らしい。頭のセンサーは取り外し可能。そしてレールへの固定も簡単だとのことだった。 ためしに適当なゆっくりを捕まえてやってみたが、確かに簡単に出来た。これなら週ごとにいろいろと工夫ができそうだ。 発情中のありすを並べるもよし。胴なしれみりゃやふらんを並べるもよし。 難点なのは成ゆっくりは使えないことぐらいか。ある程度幅を調節できるが、成ゆっくりでは大きさが合わないのだ。 そう考えながら少ない休憩時間を楽しんだ。 【あとがき】 長編構想中にちょっと書いた結果がこれだよ! 未だにゲーセンで見かけたらプレイしてます。 俺・・・この長編を書き終えたら名乗るんだ・・・ 過去作 悲しき聖帝ゆっくり! お前は愛につかれている!!1 悲しき聖帝ゆっくり! お前は愛につかれている!!2 悲しき聖帝ゆっくり! お前は愛につかれている!!3 お兄さんとドスれいむ 鬼意屋敷殺人事件 どすの加工所 幻想樹の迷宮 幻想樹の迷宮Ⅱ 徹夜でゆっくりしようぜ! 徹夜でゆっくりしようぜ!2 地震 ゆーうーかい ゆーうーかい 解決編 ゆーうーかい番外編 ~ゆっくりプレイス~ このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/485.html
「厳しいゆっくり」 そのゆっくり一家の様子は、普通とは何かが違っていた。 一家を率いるのはバレーボールサイズのゆっくりまりさ。そこは何もおかしくない。 ついていくのはゆっくりまりさとゆっくりれいむ。数は大体半々ぐらい。そこもおかしくない。 普通とは何が違うのか…その違いは、話しかけてみて始めて分かった。 「ゆっくりしていってね!!」 ゆっくりの本能を深く揺さぶる、僕の一声。 普通なら、この言葉に反応しないわけがなかった。ところが… 「……ゆっ!」「…ゆ!」 子供たちは皆、少し声を漏らしただけ。 何か言いたげな顔はしているが、『ゆっくりしていってね!!』という元気な返事は返ってこなかった。 「おにーさん!!まりさたちはほかのばしょでゆっくりするからね!! なにもようがないなら、まりさたちはもうゆっくりいくよ!!」 先頭に立っている母まりさが、僕に向かって言ってくる。 こいつからも元気な返事はない。おかしいな…こいつら病気なのか? 試しに、もうちょっと揺さぶってみるか。 「まりさ、どこに行くのか知らないが、お兄さんはもっとゆっくり出来る場所を知ってるよ」 「ゆ!?そうなの!?ゆっくりちゅれていってね!!」「れいむもゆっくりしたいよ!!」 もう我慢できない、と言わんばかりに子ゆっくりたちが口を開いた。 そうそう、それが普通の反応である。だが、母まりさは普通ではなかった。 「ゆ!!そんなこというとゆっくりできないよ!!」 「ゆ゛!!」「びゃっ!!」 何も悪いことをしていないのに、母まりさに突き飛ばされた子ゆっくりたち。 転がるほどの勢いも、皮が破れるほどの破壊力もない、ただ痛いだけの攻撃だった。 子供たちは涙目で何かを無言で訴えてくるが、僕にも母まりさにも…何も伝わらない。 「おにーさん!!わるいけどまりさたちはゆっくりいそいでるからね!!じゃましないでね!!」 そう言い放つと、母まりさはとっとと先へ進んでいってしまった。 子供たちだけが、僕を名残惜しそうに見上げていたが… 「…ゆっくりしすぎだよ!!」 母の一言で、子供たちは飛び上がるようにして母の後を追いかけていった。 あの母まりさ、どう考えても普通じゃない。 『ゆっくりしていってね!!』『もっとゆっくり出来る場所がある』という二つの言葉。 ゆっくりの本能を最も刺激するはずの言葉に、母まりさは釣られなかった。 突然変異なのか、それとも病気なのか… 「こいつは面白そうだな…」 どちらにしても、この面白そうなネタを放っておくわけにはいかない。 僕は先ほどの一家をゆっくり追いかけることにした。 一家の巣はすぐに見つかった。木の根元に、精妙にカムフラージュされた大きな穴だ。 決して大きな穴ではないが、母まりさ+数匹の子ゆっくりなら十分な広さだろう。 僕は静かに巣穴に近づいて、隙間から中を覗いてみた。 「にんげんにはなしかけられても、しゃべっちゃだめっていったよね!!」 「ゆびゃああああぁぁl!!」 「みんな、おかーさんとのやくそくやぶってしゃべっちゃったよね!!」 「ぎゅべぇおおおおお!!」 「やくそくをやぶったわるいこはゆっくりできないよ!!おしおきだよ!!」 「あぎゅあああぁっぁ!!!」 合計5匹の子ゆっくりが一列に並んでいる。 よく見れば子ゆっくりというより、赤ちゃんゆっくりぐらいの大きさだ。 母まりさは、何か言葉を発するごとに子ゆっくりに一匹ずつ体当たりを食らわせる。 その勢いは母まりさの怒りに比例して強くなり…最後に体当たりされた子れいむは、壁にぶつかると口から 餡子を大量に吐き出してしまった。 ゆっくりにとって、命の源である餡子を吐き出すことは一大事だ。 処置を怠れば、死に至ることだってある。それは子ゆっくりもよく知っていた。 「うぶっ!!ゆべえええぇっぇぇえ゛え゛え゛ぇぇぇあ゛あ゛あ゛ぃ!!!!」 「ゆゆ!!おかーさん!!れいむが!!れいむがゆっきゅりできなくなっちゃうよ!!」 「ゆっくりたしゅけてあげてね!!ゆっくりなおしてあげてね!!」 周りの子ゆっくりたちが、必死に母親に助けを求める。 だが、母まりさは鼻で笑いつつこう言い返した。 「ふん!やくそくをまもれないバカなこは、ずっとそうしてゆっくりしてればいいよ!! みんなもやくそくやぶるとこうなっちゃうからね!!ゆっくりりかいしてね!!」 自分の仕事を成し遂げたと思っているのか、母まりさの顔は満足げだ。 それに対して、子ゆっくりたちの表情は完全に沈んでしまっている。 「子供を虐めるなんて…酷い母親だなぁ」 僕はくすくすと笑いながら、そのまま様子を観察し続けた。 母が食料を取りに出かけた後、しばらくして先ほど餡子を吐いた子れいむが目を覚ました。 「ゆ…ゆううぅぅ……!」 「ゆ!ゆっくりおきてね!!」「ゆっくりしていってね!!」 周りで見守っていた子ゆっくりたちが喜びの声を上げる。 気絶していた子れいむは特に外傷はないらしく、次第に元気を取り戻してゆっくりし始めた。 僕は母まりさがいなくなった今しかないと思い、巣穴に首を突っ込んだ。 「やあ!ゆっくりしていってね!!」 「ゆ?ゆっくりしていってね!!」 今度は5匹の子ゆっくり全員が応えてくれた。 やっぱり、普通じゃなかったのはあの母まりさに原因がありそうだ。 「さっきのおにーさん!!どうしたの!?」 「ここはれいむたちのおうちだよ!!ここでゆっくりすると、おかーしゃんにおこられちゃうよ!!」 怒られるというのは…たぶん“やくそく”のことだろう。 先ほどの様子からしてこの子ゆっくりたちは、母まりさと幾つか約束を交わしているらしい。 それらを破ると、先ほどのように罰を受ける…命に関わりかねない罰を。 つくづく理不尽な母親である。自分の都合を押し付けて、破ったら虐待だなんて。 「大丈夫だよ。すぐに出て行くからね。それより、皆に美味しい食べ物を持ってきたよ」 「ゆ!?たべもの!!ほちいよ!!ゆっくりちょうだい!!」「ちょうだいちょうだい!!」 クッキーを放り込んでやると、5匹の子ゆっくりは一斉に群がって貪り始めた。 母との約束という重圧を忘れた5匹は、本能に忠実な普通のゆっくりだった。 「ゆはっ!!うっめ!!めっちゃうっめ!!」「むーしゃむーしゃ!!しあわせー♪」 「じゃあお兄さんはもう行くからね。みんなはゆっくりしていってね!!」 って、食べ物に夢中だからたぶん聞こえてないな。 僕は食事を邪魔しないよう、追加のクッキーを数十枚放り込んで、静かにその場から立ち去った。 後ろからは、クッキーを貪り食う子ゆっくりの下品な声が聞こえてくる。 母まりさが帰ってくる頃に戻ってきて、“あれ”を実行することにしよう。 帰ってきた母まりさは、巣の中の様子に驚愕した。 一面を埋め尽くす見慣れぬ食べ物。それを美味しそうに食べている5匹の子供たち。 「ゆ!おかーしゃんおかえりなさい!!」「みんなでゆっくりしようね!!」 口の周りに食べかすをつけた子供たちが、出迎えの挨拶をする。 だが、母まりさはそれに応えない。 「これはだれからもらったの!?ゆっくりせつめいしてね!!」 母まりさの疑問は当然のものだった。子供たちが自力で食料を集められるわけがない。 しかも、5匹が食べきれないほどの量だ。母まりさだって、これだけの量を集めるのには2週間はかかる。 つまり当然の結論…『この食べ物は、誰かからもらった』 「ゆ……と、ともだちのまりさにもらったんだよ!!」「そ、そうだよ!!」 「うそをつかないでね!!にんげんからもらったにきまってるよ!!」 「ゆ゛!?」 母が真相を口にした瞬間、子供たちは固まってしまった。 “恐怖”…生まれたときから植えつけられてきた感情、たった一つに縛り付けられて。 約束を破ったことが母にバレた…その次に待っているのは、無慈悲な“罰”であることを知っているから。 横一列に、背を壁に向けて並べられた子供たち。 自分達のこれからを想像して、がたがたと震えている。 されることはいつもと同じ。だが、未だにその痛みに慣れることが出来ない。 「やくそくをやぶったらゆっくりできないよ!!」 「ゆぎゃああ゛あ゛ぁぁ!!」 「やくそくやぶるこは、おかーさんのこどもじゃないよ!!」 「ごみんあじゃあぁぁぁい゛い゛!!」 「にんげんとはゆっくりできないよ!!ゆっくりおぼえてね!!」 「もうゆるじでええぇぇぇぇえ゛!!」 「にんげんはわるいものだよ!!ぜったいゆっくりしちゃだめだよ!!」 「うがやおああおおおおぉおぉぉ!!」 壁と母まりさの身体で挟み撃ちにされる度に、悲痛な叫びを上げる子ゆっくりたち。 何度も何度も、何度も何度も、何度も何度も、何度も何度も。 繰り返し繰り返し、母まりさは5匹の子ゆっくりに順番に体当たりする。 『人間とはゆっくりできない』『人間と一緒にゆっくりしたら二度とゆっくりできなくなる』 全ては理解してもらうため。このことを理解して、覚えてもらうためだ。 自分は母に人間の危険性を教えてもらっても、すぐに忘れてしまった。 そして人間についていったばっかりに、友達を皆食べられてしまった…そんな自分の二の舞にならないように。 子供たちには忘れて欲しくない。ずっと覚えていて欲しい。だってそうしないとゆっくりできないのだから。 「がまんしてね!!がまんしてゆっくりできるこになってね!!」 「げりょうあおあおあおあおああああああ!!!」 母まりさは、何度も何度も、子ゆっくりたちに伝わることを願って…体当たりを続けた。 昼になって、例の巣に戻ってきて見ると…巣の中では再び虐待が行われていた。 母まりさが子ゆっくりに体当たりするたびに、張り裂けんばかりの悲鳴が僕の耳を突く。 「うぎゃあ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁぁぁぁぁ!!!」 「ぎゅええええべべべべええ!!!」 「あばばばばあああああぁぁぁぁあ!!」 何故だか分からないが、母まりさは相当怒っているらしい。 母まりさの言葉は乱れすぎていて何と言っているか聞き取れないが…かなりノリノリである。 待てど暮らせど、虐待の嵐はなかなか止まない…痺れを切らした僕は、釣り針を握るとそっと巣の中に手を 突っ込んだ。 「……よし」 虐待に夢中になっている母まりさは、自分の帽子に釣り針が刺さったことに気づいていない。 子ゆっくりたちも、すっかり怯えきってしまって周りの様子など目に入っていなかった。 僕は、糸を思いっきり引っ張った。それに従って、母まりさの帽子が脱げて瞬く間に巣の外へ飛んでいく。 「ゆ!!まりさのぼうし!!ゆっくりまってね!!」 即座に異変に気づいた母まりさは、帽子を追って巣の外へ。 終わりなき虐待から開放された子ゆっくりたちも、安堵の表情を浮かべながら恐る恐るついてくる。 「おにーさん!!それはまりさのぼうしだよ!!ゆっくりかえしてね!!」 糸にぶら下がった帽子をぶらぶら振り回す僕。 まりさは必死にジャンプしてそれを口で咥え取ろうとするが、ぎりぎり届かない高さに調節しているので、 どんなに頑張っても…帽子まで後一歩、というところで勢いを失ってしまう。 「ゆぎゅうううぅぅぅ!!ゆっぐりがえじでね゛!!がえざないどゆっぐりざぜであげないよ゛!!」 「あっそう、じゃあ返してあげるよ、ほーれほーれ♪」 上から目線で物を言う母まりさを、僕は満面の笑みでおちょくる。 ぶんぶん振り回される帽子を目で追いながら、あんぐりと口を開けて狙いを済まして… 命と同じくらい大事な帽子を奪い返そうと、必死にピョンピョン跳ね続けている。 「うぎゅうううぅぅぅ!!!いじわるしないでね゛!!ゆっくりがえじでね!!」 ふと、巣の入り口近くにいる子ゆっくりたちに視線を移す。 さっきからじっとこっちを見ているが…母を応援する声は聞こえてこない。 普通の一家なら、『おかーさんがんばってねぇ!!』とか、『おにーさんとはゆっくりできないよ!』の 一言ぐらいあるものだが… つまり、そういうこと。子ゆっくりたちにとって、母まりさは“そういう”存在なのだ。 「お母さんまりさにひとつ提案だよ。子供の帽子かリボンを持ってきたら、この帽子と交換してあげる」 「ゆ!?」 果たして口車に乗って、子供の髪飾りの強奪に乗り出すかどうか… 僕にとっては一種の賭けだったのだが…どうやら僕の勝ちだったようだ。 母まりさは目の色を変えて、巣の入り口に集まっている子ゆっくりたちに襲い掛かった。 「ゆっくりにげないでね!!おかーさんにぼうしとりぼんをちょうだいね!!」 「おがーざんごっじごないでえ゛え゛ぇぇぇ!!!」 「ぞんなごどずるおがーじゃんどはゆっぐりでぎない゛い゛い゛い゛ぃぃぃ!!!」 子ゆっくりにとっても、帽子やリボンは大事なものだ。簡単に取られるわけがない。 母まりさに捕まらぬよう、子ゆっくりたちは蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。 「ゆっくりつかまってね!!にげるこはゆっくりできなくなっちゃうよ!!」 「やだあああぁぁぁぁ!!!づがまるどゆっぐりでぎないよ゛!!」 「おがーざんやめでね゛!!ゆっぐりごっぢにごないでね゛!!」 母と子には体格差があると言っても、命と等価のモノがかかっているこの状況では、子供たちはなかな捕まらない。 実のところ、先ほどのクッキーにはゆっくりの運動能力をちょっとだけ強化する薬物が入っていたのだが… 母まりさも、当の子ゆっくりたちもそのことにはまったく気づいていない。 「おがーざんにぼうしどりぼんちょうだい!!そうすればみんなでゆっぐりでぎるよ゛!!」 なかなか追いつかないので、目に涙を浮かべながら子供を説得しようとする。 しかし、そんな言葉で釣られるほど子ゆっくりは愚かではなかった。 「おがーざんうそづいでるよ!!うそづくおがーじゃんどはゆっぐりでぎないよ゛!!」 「ゆっぐりついてこないでね゛!!ゆっくりどっかいってね゛!!」 「ゆぐぐぐぐぐ…どうじでぞんなごどいうの゛!!ゆっぐりでぎなぐなっでもしらないよ゛!!」 まだまだ子ゆっくりたちには追いつきそうにない母まりさ。 僕は母まりさにもっと必死になってもらうために、ライターで母まりさの帽子に火をつけた。 ボオォッ!! 何の素材で出来ているのかわからないが、本当によく燃える。 「ゆぎゃああああーーー!!!まりさのぼうしもやざないでえ゛え゛え゛ぇぇぇ!!!」 子ゆっくりを追いかけるのを止めて、燃え上がる自分の帽子目掛けて飛びついてくる母まりさ。 だが、僕がうまく糸を動かして帽子をひょいっと遠ざけたので、母まりさはそのまま地面に激突した。 「ゆぶっ!!やめでね゛!!まりざのぼうじもやざないで!!はやぐひをげしでよお゛お゛お゛ぉぉぉ!!!」 「まぁまぁ焦るなって。結構綺麗に燃えてるじゃないか」 地面に顔から落ちて身悶えている隙に、母まりさの髪を釘に結び付けて地面に打ちつけた。 これで母まりさは、ほとんど身動きが取れなくなった。 「ひをげしで!!うぶゅ!!いだい゛!!いだいよ゛!!がみがひっばられでるううぅぅぅぅ!!!」 帽子を燃やされている悔しさと、髪を引っ張られる痛みで…母まりさの顔は涙でボロボロになる。 痛みにのたうち回ろうとすればさらに痛みが襲うので、下手に動けない状況だ。 それでも母まりさは、何度も何度も助けを求める叫び声をあげた。 「まりさをだずげでぇ!!ごのままじゃゆっぐりでぎなぐなる゛!!」 「おねがいだがら!!ごっがらはなぢでえええぇぇえ!!!あだまがいだいいいいぃぃぃい!!!」 「ぼうじ!!まりざのぼうし!!もやざないでよ゛ぅ!!」 「……らんぼうするおかーしゃんは、ずっとそこでゆっくりしてればいいよ!!」 突然、一匹の子れいむが震えながら力いっぱい言い放った。 するとそれに続いて、次々と子ゆっくりたちが母まりさに罵詈雑言を浴びせる。 痛めつけられる母まりさの姿を見て、子ゆっくりたちの心境に変化が生じたのだろう。 母まりさが動けないことに気づいた、というのもあるだろうが。 「そうだそうだ!!おかーしゃんのぼうしなんか、ゆっくりもえちゃえばいいよ!!」 「おかーさんはずっとそこでゆっくりしててね!!こっちにこないでね!!」 「ばかなおかーさんはゆっくりしねばいいよ!!」 「いや゛ああぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!ひどいごどいわないでえ゛え゛え゛ええぇぇぇぇえぇえぇ!!!!」 次々に打ち明けられる子ゆっくりたちの本音が、母まりさの心を深く抉る。 今まで母まりさに虐待され続けてきた子ゆっくりの鬱憤が……ここで爆発した。 「ゆっくりしね!ゆっくりしね!」 「らんぼうもののおかーさんはゆっくりしね!!」 「れいむたちにいたいことしたよね!!だからおかーさんにもいたいことしゅるよ!!」 身動きの取れない母まりさを取り囲んだ5匹は、怒りを爆発させながら集団リンチを始めた。 つい数分前まで母の虐待に怯えていた子ゆっくり…僕がちょっと手伝ってやっただけで、立場は逆転した。 「いだっ!!いだいよ゛!!ゆっぐりやめでね゛!!やめだらゆっぐりさせてあげるよ゛!!」 「うるさいよ゛!!おかーさんのいうごとなんか、もうきかないよ゛!!」 「おかーさんのせいでいままでゆっくりできなかったよ!!ゆっくりしんでいってね!!」 一体どれだけの間、母まりさに虐待されてきたのだろうか…その間に溜めてきたストレスは相当のものらしい。 容赦ない体当たりが、母まりさの身体を深く傷つけていく。 ところどころ餡子が漏れ出し、さらに傷は広がって痛みを誘発させる。 「あぎゃああああああっぁぁぁあぁ!!やめでやめでやめでやめでやめでやめでやめで!!!! じぬ゛ぅ!!じんじゃう゛!!ごのままじゃじんじゃう゛!!おねがいだがらやめでよおおおおぉぉぉ!!」 母まりさの悲鳴を完全に無視し、リンチを続ける子ゆっくりたち。 僕はそんな子ゆっくりたちに優しく話しかけた。 「そろそろ疲れてこない?お母さんの帽子が燃えてるのを見ながら、ゆっくり休憩しなよ」 「ゆ!そうだね!!ゆっくりつかれてきたよ!!」 「ゆっくりやすもうね!!みんなでゆっくりしようね!!」 「おにーさんあたまいいね!!おかーさんとはおおちがいだよ!!」 そんなことを言いながら、母まりさから離れていく。 取り残された母まりさの姿は…それはもう酷いものだった。 「ゆぶ……どぼぢで…?……まりざはっ…みんなのだめにっ…!!」 目玉は片方が抉られ、口は不細工に引き裂かれ、頬も深く噛み千切られている。 まだ生きているが…このまま餡子を漏らし続ければ、命が尽きるのは時間の問題だ。 「ゆー!きれいだね!!」「ほのおってきれい!!」「ゆっきゅりー!!」 「もえろもえろー♪」「ゆっくりもえろー♪」 炎をあげて燃える母まりさの帽子。それを見つめる子ゆっくりたちの目は輝いている。 やっと母まりさの圧制から解放される。明日からは自由にゆっくり出来る。 掴み取った明るい未来を見据えた…そんな目だ。 僕は糸を木の枝に固定して子ゆっくりたちから離れると、そっと母まりさに近づいた。 「やぁ、気分はどうだい」 「うぎゅ…だじゅげで……ゆっぐりでぎな…いよ…!!」 「でも、子供たちは今までゆっくり出来てなかったんだよ。お母さんである君が虐めていたせいでね」 「うぞだよ!……まりじゃは!…まりじゃは……みんな゛のっ…ために゛…!」 まだ悪あがきを続けている。うねうねと動く母まりさの頬の皮が気持ち悪い。 「みんなのために……ねぇ」 僕はため息をつきながら振り向いて、子ゆっくりたちに声をかけた。 子供たちは糸にぶら下がった帽子が燃えているのを、まだ楽しそうに見物している。 「なぁみんな!!このお母さんどうする?助けてあげる?」 「ゆ?そんなのほっといていいよ!!それよりおにーさんもこっちでゆっくりしようね!!」 「おかーしゃんなんかそのまましねばいいよ!!ゆっくりしんでね!!」 との返答を貰い、そのまま視線を母まりさに戻す。 「…だとさ」 僕は母まりさに向けてニコリと微笑んだ。 母まりさは、僕にとって最高の表情をしたまま…最期の叫び声をあげた。 「ゆ゛っ……ゆぎゃああああぁあぁぁぁぁぁぁぁあがえんrぎなえりおいりあがあrがにrg!!!!」 声にならない叫びをあげたが最後、母まりさは動かなくなった。 子供たちにはずっとゆっくりしてもらいたい。だからこそ、厳しく接してきた。 だが、子供たちには伝わっていなかった。それどころか家族を崩壊させる一因になってしまった。 どうしてこんなことになってしまったのか、自分は間違っていたのだろうか。 母まりさは考える。考える。考える。でもわからない。餡子が足りないからわからない。 子供たちに伝わらなかった想い。伝わらなかった願い。 一生懸命伝えたつもりだった。でも、伝わらなかった。伝えたかったのに、伝わらなかった。 そしてこれからも、その想いと願いは、伝えることはできない… 傍らで笑いあう子供たちの声が、遠くに聞こえる。 母まりさは、ゆっくりと後悔しながら…さいごのいのちを吐き出した。 あとがき この話、本当にかわいそうなのは誰だろう? 作:避妊ありすの人 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2481.html
ゆっくり贅沢三昧・前編の続きです。 うんうん描写・しーしー描写があります。 さっそく、我侭な飼いゆっくりがいるという家に行く。 飼いゆっくりイジメというのをやってみてかった俺にはうってつけの仕事だ。 5つの実だったものは、赤れいむ3匹、赤まりさ2匹として産まれていた。 親れいむにすりすりしたり「ゆっ♪ゆっー♪」と 歌を唄ったりしてゆっくりしている。 親まりさは赤ゆっくり達に冷蔵庫から勝手に持ち出した”丸ごとバナナ”を与えていた。 「ゆっ!おそいよおにーさん」 「まりさがかりをしてきたからいいようなものの、みんなおなかぺこぺこなんだぜ!」 「「「「「ゆっくちー」」」」」 しかし、帰ってきたのはいつものお兄さんではない。 初めて見る人間だ。 「ゆゆーん、おにいさんだれ?ゆっくりできるひと?」 男は無言でビニール紐を取り出してわっかを作り、それをまりさに被せる。 「ゆっ?」 キュッとビニール紐を引くと輪は狭まり、親まりさの顎下あたりの足をきつく縛る。 「ゆゆっー!」 痛みはそれほどでもないが、なんだかゆっくりできない感じで 親まりさは産まれて初めての不自由を味わった。 「なんだかゆっくりできないよ!ゆっ、あしがうごかないんだぜ!」 跳ねようとししてもビニール紐のせいで体の伸縮性が奪われ動くことができない。 後遺症の残らない簡易足焼きといった感じだ。 ゆっゆっ、と涙目になっている。 「ゆっくりできないばかなおじさんは、はやくこれをはずしてね!」 それを見ていた親れいむが男に対して全力で体当たりをしてきた。 「まりさになにをしたの!ゆっくりはずせばらくにころしてあげるからはずしてね!」 ぽよんぽよんっとくすぐったい。 「おかーちゃん、ゆっくちできないおじさんをやっつけちぇね!」 赤ちゃん達も声援を送る。 男は親れいむを鷲掴みにすると、親まりさと同じようにビニール紐を巻いた。 「ゆっ!きゅうにうごけなくなったよ!」 それから男はポケットに入れていたプラスチックケースから針を取り出して 触るかどうか程度に針で親れいむのほほをつっついた。 チクッ 「ゆ”ゆ”!」 ビクンッと親れいむの顔が硬直し痛みに声をあげる。 数秒の間を与え、「ゆ?ゆ?」と不思議そうな声をあげているところに 今度は数回針先でほほを触る。 「ゆ”ゆ”!」 「ゆ”ぐ!」 「やめ”ぐ!」 針先がほほを触れるたびに声があがる。 今度は親まりさが、男を罵倒する。 「ゆっくりやめてね!れいむになにするの! ここはまりさたちのおうちだからゆっくりでていってね!」 「ゆ”ぶ!」 まりさのほほを針先で触る。 それから、赤ゆっくりを一瞥し 数の多い赤れいむ3匹から1匹を手に取る。 「ゆ!ゆっくちやめちぇね!はなちちぇね!」 親たちの様子を見ているため、なにかゆっくりできないことをされる事を理解していた 赤ちゃんれいむは、ふるふると体を震わせて涙目になりもがいている。 チクッチクッ 「ゆ”ん」 「ゆ”ゆ”」 あまりの痛みに白目をむいて気絶をしてしまった。 どれくらいの時間が過ぎたのだろうか ゆっくり達は透明な箱の中で目を覚ました。 透明な箱は3段重ねになっており それぞれの箱には底部に赤ゆっくりが通り抜けられない程度の穴が開いていた。 一番上から赤まりさが2匹、二段目に赤れいむが3匹 一番下の段に親れいむと親まりさがいる。 「ゆっ!れいむのあかちゃんたちがおそらをとんでるみたい!」 「ゆっ、まりしゃのしたにれいみゅとおかーしゃんたちがいるよ!」 一番下の段の親れいむ、親まりさのところへ行こうとする赤ゆっくり達だが 箱の底部の穴が小さすぎて下の段へ行くことはできない。 「ゆっくりおりてきてね!」と親まりさが赤ちゃんの落下を受け止めるために舌を伸ばす。 「やあ、君達ゆっくりしてるかい?」 お兄さんの登場である。 「ゆっ!ここはれいむのおうちだよ! ゆっくりできないおにいさんはでていってね!」 先程、針でチクチクといじめられた事を覚えていたれいむはお兄さんをみるや お家宣言をしてお兄さんを追い出そうとする。 透明な箱の内側に「ゆっゆっ」と体当たりをするが跳ね返される。 「あれ、ごはんをもってきてあげたのに残念だなぁ・・・でていくとするよ」 お兄さんは手に持ったお菓子や紙パックのオレンジジュース、生野菜を見せる。 「ゆゆ!それはおいていってね!」 「ゆっくりたべさせてね!」 「「「ゆっくちごはんちょうだいね!」」」 と色めきたつゆっくり一家。 「しょうがないな、ほれ」 お兄さんは3段重ねの透明な箱の一番上の段の上部から砕いたクッキーを入れる。 「「ゆっくちー!」」 一番上の段は赤まりさ2匹の部屋だ。 「「むーちゃむーちゃ、ちあわちぇー!」」 汚く食べかすをポロポロこぼす2匹、箱の底部から細かいクッキーの塊や粉が 2段目の赤れいむ2匹のところへ落ちる。 「「「ぺーろぺーろ」」」 「ゆっ!れいむにもちょうだいね!」「まりさにもちょうだいね!」 一番下の段の親れいむと親まりさには何も落ちてこない。 「喉が渇いただろう、オレンジジュースをあげるから口を開けて待っててね」 「ゆっくちりかいしちゃよ!」「あ~ん」 今度は紙パックのオレンジジュースを少量づつ赤まりさの口に流し込む。 水滴がわずかに下の段へ落ちて、赤れいむ3匹はわさわさと群がりそれを舐める。 そして一番下の段の親たちには何も落ちてこない。 これを数回繰り返した。 「ゆっくちれいみゅたちはたりにゃいよ!」「まりちゃばかりずりゅいよ!」 「あかちゃんまりさたち、ちゃんとおかーさんたちにもわけてね!」 赤れいむ3匹はぴょんぴょんとジャンプをして上から落ちてくる クッキーの粉やオレンジジュースのおこぼれを我先にとキャッチしようとしている。 「ゆゆっ!ゆゆっ!」 「さて、そろそろか」 お兄さんは時計を確認した。 「ゆっ、まりしゃはしーしーしたくなっちゃよ!」「ゆっくちしーしーしゅるよ!」 最上段の赤まりさ2匹はオレンジジュースを飲みすぎてたぷんたぷんになっていた。 喉がかわきやすいパサパサのクッキーとオレンジジュースのコンボの成果である。 水分をとりすぎるとゆっくりできない事を本能的に知っている赤まりさは顎のあたりにある 尿道から放物線を描いて放尿する。 狭い透明な箱で用を足せば水浸しになり 自分達がゆっくりできないため箱の底部の穴を目掛け狙いを定める。 「あにゃめがけてしーしーするよ!」 ジョロロロロー! 「ゆ!」「しーしーがゆっくちながれてくるよ!」 2段目の赤れいむのところへ赤まりさの尿が降り注ぐ。 それはまるで雨。 逃げ場のない透明な箱では全て浴びるしかない。 「ゆ!あめさんはゆっくりできないよ!」 「おかーさんのぼうしにかくれてね!」 気づいた親達は赤れいむを助けたいが、当然それは出来ない そして、自分達のところへも赤まりさの尿が降り注ぐ。 「「ゆゆー!」」 お兄さんは更にクッキー&ジュースのコンボを赤まりさに与え続ける。 「こんどはうんうんがでりゅよ!」「ゆっくちまりしゃのうんうんがうまれりゅよ!」 ぷりぷりと柔らかいうんうんが底部の穴から2段目の赤れいむへ降り注ぐ。 「やめちぇね!」「しーしーもうんうんもゆっくちできにゃいよ!」 「ゆぐぅ”!」 しーしーを浴びて体が濡れて柔らかくなったところへ、うんうんがボトボトと落ちてきて 1匹の赤れいむを直撃した。 頭部がぐにゃりと凹み、白目をむいてもんどりうっている。 残り二匹は運よくかわすことが出来たが、そのうんうんは三段目の親たちに降り注ぐ。 親れいむとまりさは舌を伸ばして赤れいむを助けようとしていたためそこへ、うんうんがポトリ 「まずいよ!くさいよ!」と文句を言う。 「あかちゃんたち!ゆっくりやめてね!」 「しーしーもうんうんもしないでね!」 最上段の赤まりさ2匹に声は届かない。 好きなだけ食べて飲んで、うっとりとなりしーしーとうんうんを繰り返す。 ここで箱をチェンジ! 実は、この3段重ねの透明な箱は棚の引出しのように入れ替えることが可能なのだ。 最上段を親ゆっくり、2段目を赤まりさ、3段目を赤れいむにチェンジした。 「ゆ!、いちばんうえならしーしーもうんうんもおちてこないよ!」 2段目の赤まりさ2匹は食べて飲んで昼寝を始めた。 最下段の赤れいむ3匹は1匹がうんうんに潰されて死亡しており、2匹は箱の隅で泣いている。 「ゆえーん」「ゆっぐゆっぐ」 「さっきは、おまえたちに食べさせてやれないでごめんな!」 お兄さんは赤まりさにしたように、クッキーとオレンジジュースを親達に与える。 ただし、オレンジジュースは2リッタータイプだ。それを10本。 「むーしゃむーしゃ、ゆっくりできるよ!」 「ごーくごく、あまあまー!」 餌を与えてやると、さっきまでのことを忘れた親2匹は限界まで食べて飲んでくれる。 赤れいむは泣いているが、最下段のため最上段の親達からは ゆっくりと寝ている赤まりさしか見えない。 やがて赤まりさと同様に食べすぎ飲みすぎる親ゆっくり達。 「ゆっ、うんうんでるよ!」 「まりさはしーしーでるよ!」 赤まりさ2匹の非でない大量のしーしーとうんうんを排泄する2匹。 ジョボボボボボォー! ぷり・・・ぶりぶりぶりぶり! 2段目の赤まりさ2匹は突然のスコールに目を覚ます。 「ゆ!おおあめだよ!」「おぼうしにかくれりゅよ!」 なんとかスコールなスカトロをやりすごす2匹、しかし最下段の赤れいむはそうはいかない。 これ以上は下がないためしーしーは箱に溜まり、うんうんも容赦なく上から押しつぶしてくる。 「やめちぇね!ゆっくちちないであめしゃんやんでにぇ!」 「ゆっくちおぼれりゅよ!・・・がぼがぼがぼ」 最下段は8割まで浸水し、赤れいむは完全に水没した。 口には親れいむのうんうんが詰っている。 ゆっくりは窒息死はしないとはいえ、水分で溶け出すのは時間の問題だ。 ここで箱チェンジ 最下段を取り外し、2段目を最下段に、最上段はそのまま。 水没し、どろどろに溶けていく赤れいむが見やすいように、先程まで最下段であった 赤れいむ3匹の入った箱を2段重ねの箱の前に置く。 「ゆゆっ!れいぶのあがじゃんがぁぁぁあああ!」 「どぼぢでぞんなごとをずるのぉぉぉおおお!」 「まりしゃのいもうちょがぁああ!」 いや、お前らがやったんだろ。 「ゆっくり聞いてね!赤れいむは君達のしーしーとうんうんでこんな目にあったんだよ!」 箱を近づけて、その液体がしーしーで汚物はうんうんであることがわかるようにする。 「これに懲りたら、しーしーもうんうんもしないでね!」 「れいむぅのうんうんがぁぁぁあああ!」 「まりさのしーしーでえぇぇぇええ!」 2匹は驚愕の表情を浮かべ深い後悔にさいなまれている。 休ませることなく、オレンジジュースを流すおにーさん。 追加の2リッターオレンジジュース20本だ。 今度は飲まないようにする親だが、底部の穴からオレンジジュースが流れて 最下段となった赤まりさの元に雨として降り注ぐ。 「ゆっくちおぼうしにかくれりゅよ!」 「あめしゃんゆっくちちないでやんでにぇ!」 しかし、今度は一番下のため帽子でやりすごしても、どんどん下にオレンジジュースがたまっていく。 それを見たれいむは口をあけてオレンジジュースが下に落ちないように飲みだす。 「のまないと、じゅーすであかちゃんがおぼれるよ!んぐんぐ!」 「まりざものんでたずげる、がーぼがぼがぼ」 擬音を口で言うあたり余裕がありそうだが涙目で結構必死だ。 2匹の親は再び20リッターのオレンジジュースを飲み干した。 「ゆ”ゆ”しーしーがまんずるよ”」 「まりざもがまんずるよ”」 「ゆっくちあめしゃんやんだよ!」 「ゆっくちたすかっちゃよ!」 親達がジュースを飲み干したことで、雨から救われた赤まりさ達 こぼれて降り注いだ分はまりさ種の丈夫な帽子のおかげで濡れないで済んだ。 一方、大量の水分を摂取した親2匹は危ない このままでは内部からふやけて、餡子が染み出し絶命するかもしれない。 そこで箱を揺する。 「ほーら地震だぞぉー!」 「「ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”」」 内部からの水の圧力に負けた尿道がブルブルと震えてついに お漏らしという形で決壊する。 ぷしゃー!ジョボボボボボボボボォォ! 勢いよく噴出す2匹のしーしー。 それは容赦なく下段の赤まりさ2匹に降り注ぐ大雨となる。 「あめしゃんやめちぇねぇ”」 「ゆっぐちできに”ゃいよ”」 再びしーしーのスコールは赤まりさ2匹を直撃する。 初めのうちこそ傘のように帽子が機能して防げていたが 徐々に箱の水かさは増していき 溺れて溶け出すまで数分とかからなかった。 「もっど、ゆっぐりじだがっ・・・ごぼごぼごぼ」 1匹はぴょんぴょんと跳ねて、少しでも水没を遅らせようとしていたが 無駄な抵抗である。 すぐに飛ぶ高さよりも水かさは増していく。 「やめちぇね!やめじぇ・・・ごぼごぼごぼ」 またも、親に見やすいように2段目を取り外して正面に向けた。 赤まりさが水没し溶けていく様を見せつけるためだ。 ・・・が 箱を揺らしすぎたせいか2匹は発情していた。 これでは赤まりさを見せつけるどころではない。 「れいむぅうう!あかちゃんふやそうねぇぇえええ!」 また、赤ちゃんを作られては振り出しにもどってしまうので すばやく水没していたの赤まりさを1匹とりだすと親まりさのぺにぺににあてがった。 もう1匹は親れいむのまむまむにねじ込んだ。 「ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”・・・たすかっちゃの?」「ゆっ、おかーしゃん!」 かろうじて息のある赤まりさ 「のほぉぉぉぉおお!ずっきりりぃぃぃぃ!」 「ゆ”ゆ”!!」「ゆぶべっ!」 発情アリスに襲われている赤まりさのようだ。 コンドームと成り果てた赤まりさ2匹は絶命し、頭から小さな茎を伸ばし黒ずんで果てた。 そこまでして、ようやく我に返る親達。 「どぼじでれいぶのあかじゃんでずっぎりずるのぉぉお!」 「まりざのあがじゃんがぁあああああ!」 この悲劇が2匹の餡子脳に深く刻まれてインポテンツになってくれれば幸いだ。 予定では、突起を引っ張り出して虚勢するはずだったので 傷つけることなく勃たなくなれば飼い主も喜んでくれるだろう。 後日、2匹の飼いゆっくりは 人間に恐怖するようになり、子作りにトラウマをもち しーしーもうんうんもしない それどころか、甘いお菓子もジュースも口にしなくなったという。 餡子脳へのダメージが行き過ぎたのか、味の好みも変化してしまった。 「れいむはくさったおやさいだいすきだよ!なまごみやざっそうをたべさせてね!」 「まりさはおみずをのむよ!すてるあぶらでもいいよ!」 「むーしゃむーしゃ、しあわせー!」 「ぺーろぺーろ、しあわせー!」 「ゆっ、おにーさんおしっこするなられいむのおくちにしてね!」 「うんうんながすのもったいないよ!まりさがたべるよ!」 「「ゆっくりしていってね!」」 過去の作品:ゆっくり繁殖させるよ! 赤ちゃんを育てさせる 水上まりさのゆでだこ風味 作者:まりさ大好きあき このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/410.html
ゆっくりのすくつ 「先輩! 見つけましたっ!」 ゆっくり殲滅用の最新機器を背負い、ゴーストバスターズのような出で立ちをした新人君が俺に呼びかける。 「でかした! 今そっちへ行く!」 反応の途絶えたレーダーの電源を切り、俺も重たい装備を背負い直して新人君のあとに続く。 鬱蒼とした森を抜けると、一気に視界が開ける。切り立った崖のふもとにそれはあった。 「まさかこんなところに……」 人間も容易に出入りできるほどの巨大な洞穴。ゆっくりたちの巣穴だ。 「なるほど。こんなところじゃレーダーの電波も途絶えるわけだ」 「行きましょう先輩――」 「ここはれいむたちのおうちだよ!! ゆっくりでていってね!!」 「ちちちちーんぽ!! ちちちちーんぽ!!」 「うわ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん!! あのおじざんだぢだあ゛あ゛あ゛!!」 「むきゅううーー!! ゆっくりできないひときらいーー!!」 「かえりみちでじこにあってゆっくりしね!!」 処理場の作業着姿の俺たちを見るなり、巣穴の数十匹のゆっくりたちは思い思いの反応を見せた。 ぷくーっと膨れて威嚇するもの。怯えて泣きわめくもの。口汚く罵るもの。 そのけたたましい声を聞いていると吐き気がしてくる。 「ゆ゛!? なんでおじさんたちがここにいるの!?」 騒ぎに気づいた一匹のれいむがやってきて、こちらの様子をうかがっている。 頭のリボンに小さな発信機が付けられていることを確認する。 いつだったか、俺が捕獲し、発信機をつけた上で開放してやったれいむだった。 捕獲した饅頭に発信機をつけて放し、レーダーで追跡する。無尽蔵に増え続けるこの害獣を根元から断つためには、 現在最も効果的な戦術だった。 と、その時、無謀にも一匹の赤ちゃんれいむが新人君に飛びかかり、その腕に噛み付いてきた。 「ゆっくちちねーー!!」 だが、饅頭共の噛みつき攻撃など痛くもかゆくもない。 「あん? バーカ」 グシャア!! 「ぴッ……!!!」 愚かな赤ちゃんれいむは一撃で叩き潰され、洞穴内に甘ったるい香りが広がった。 「うわ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! れいむのあがぢゃんがあ゛あ゛あ゛!!!」 「なにするのおじさんたち!! いますぐしね!!」 「わからない!! わからないよーー!!」 「ここはれいむたちのおうちだっていってるでしょ!! さっさとでていt 『黙れぇッ!!!』 たまらず俺が大声で一喝すると、ゆっくりたちは恐れおののき、一瞬にして静まり返った。 「ひゃはは! さすがは先輩!」 「ふんっ……」 こんなゴミクズ共に対して声を荒げてしまった大人気ない自分を少々恥じる。 「しかしこれまた……見てくださいよ先輩。あれ」 洞穴の隅には、田畑を荒らし、民家を荒らし、商店を荒らし、人間たちから奪い取った大量の食料が備蓄してあった。 野菜、果物、その他加工品の山に加え、中でも目に付くのが大量のプリン……。 「一体どうやってこんなところまで食料を運び込むんですかねぇ」 「……おそらくあいつの尽力によるものだろう」 「うーうーうまうまっ☆ もっどぷっでぃんだべだいじょーー♪」 騒ぎには我関せずで、洞穴の奥でプリンを貪り食っているゆっくりれみりゃ。 その身体は丸々と太り、”お嬢様”などといった印象は微塵も感じさせない。 れみりゃ種は四肢があるものが多く存在しており、空を飛ぶこともできる。 こんなデブでも、一匹いるだけで作物被害は甚大なものとなるのだ。 「うげぇー……あれってれみりゃっすか……? きもちわるっ……」 「おい饅頭共! 今すぐそこの作物を人間に返して来い!」 「これはまりさたちがみつけたごはんだからあげないよ!!」 「おじさんたちはあせみずたらしてはたらいて、もっといっぱいごはんつくってね!!」 「どうしてもというならすこしだけわけてあげてもいいよ!! ゆっくりどげざしてね!!」 まったく、どこまでも生意気で憎たらしい饅頭共だ。 「やはり話にならんな。仕方ない、さっさと済ませてしまおう」 「へーい」 その場を新人君に任せ、俺は入り口側で待機する。 「はいはい饅頭共っ! ちゅうもーーーく!!」 敵意むき出しで、しかし若干恐る恐るといった様子で、新人君の言葉に耳を傾けるゆっくりたち。 「お兄さんたちは、ゆっくり処理場から君たちをぶっ殺しにやってきましたー!」 処理場という言葉にビクッと身を震わせるゆっくりたち。 ただの人間とは違う。処理場から来た人間だ。ゆっくりたちはよく知っている。 ありとあらゆる残虐な手段で自分たちを痛めつけ殺してきた恐ろしい人間たちだ。 小さなゆっくりでも親から教えられて知っている、決して捕まってはいけない地獄の使者だ。 そういえばこの人間たちもよくわからない機械を背負っている。 きっと火や水が出て、自分たちを一網打尽にしてしまう機械なんだ。 そうして殺されてきた家族や仲間を見てきたものもいる。 処理場の作業着を見たことがなかったゆっくりたちも、事態の重さを痛感する。 もうおしまいだ。戦慄が走り、吐き気が襲い、冷や汗が吹き出る。 と、いち早く大声で泣き始める一匹のまりさ。 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! じに゛だぐな゛い゛い゛い゛!!!」 「黙れやこらぁ!!!」 グシャアァッ!! 「ぶヒゅッ……!!」 新人君に強烈な蹴りを入れられ、破けた皮から餡子をぶちまけながら吹っ飛んでいくまりさ。 そのまま洞穴の壁面にぶち当たって弾け、絶命する。 「お兄さんがしゃべってるのに余計な口を挟まないことー! いいですねー!?」 ふわりと舞い落ちるまりさの帽子。ゆっくりたちは言葉を失い、目に涙を浮かべ、立ちすくんだ。 「ただしっ! 今から君たちにも、生き残るチャンスがありまーす! はいっ!」 小さな子供へ手を差し伸べるかのごとく屈み、手のひらを差し出す新人君。 「この手に最初に乗っかったコは、逃がしてあげまーす!」 「ゆっ!」「ゆゆっ!!」「ゆー!」 目を血走らせ、今にも飛び出さんばかりのゆっくりたち。まったく単細胞な生き物である。 「それじゃあ始めるよー? いいー? はい! スタート!」 「「「「「「ゆーーー!!!!」」」」」」 一斉にピョンピョンと飛び跳ね、猛烈な勢いで新人君の手のひらへと向かっていく。 「どいてよおおおお!!! れいむがゆっくりするのおおおお!!!」 「いやああああああ!!! じゃまするれいむはゆっくりしねええええ!!!」 「おがあざんはいっぱいゆっぐちじだんだがらもういいでしょううう!!?」 「そんなこというあかちゃんはいらないよ!!! ゆっくりしね!!!」 押し合い、へし合い、噛みつきあい、潰しあい、仲間割れが始まる。 何匹かの赤ちゃんゆっくりは、自分より大きなゆっくりに踏み潰されて死に至った。 と、遂に一匹のまりさが新人君の手のひらに乗っかる。 「ゆっ!」 「はーーいおしまーーーい!!」 「「「「「ゆ゛ぐううううーーー!!!!」」」」」 ゲームオーバーを知らせる声に顔を歪ませ泣きじゃくる、満身創痍のゆっくりたち。 と、競争を避けて脱走の機会を窺っていた一匹のぱちゅりぃが、新人君の脇をすり抜け強行突破を図る。 「おおっと、君たちは逃がさないよー!」 ほかのゆっくりたちはもう新人君に遮られて逃げられない。 病弱な身体で必死に飛び跳ね、肩で息をしながら入り口へと向かうぱちゅりぃ。 遂に入り口で待機中の俺の元へたどりつく。 「むきゅ……むっきゅううーーーーー!!」 ドグシャアアア!! 「む゛ギゃ゛ア゛っ……!!」 強引に走り抜けようとしたところをすかさず踏み潰す。 跡形も残らないように何度も踏みつけ、地面にできあがった汚らしい染みをグリグリと踏みにじる。 本来は俺と新人君の役割は逆なのだが、彼がいつもあちらの役を務めたいと言うのでね。 まぁ将来有望というかなんというか……。 「よしよし、君は新しいゆっくりプレイスで存分にゆっくりしてね」 「うん!! ありがとうおにいさん!!」 手のひらに乗ったまりさを優しく撫でてやる新人君。 もちろんその帽子にこっそり新たな発信機を付ける作業は忘れない。 「ま゛っ゛でえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!! わ゛だじも゛づれ゛でっ゛でえ゛え゛え゛!!!」 「ま゛り゛ざだげずる゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!」 「のろまなみんなにはかまってられないよ!! そこでゆっくりしんでね!!」 まりさは仲間を見捨て、入り口側へピョンピョンと飛び跳ねていく。 「君が競争で勝ったんだね。おめでとう」 「ありがとうおじさん!! これでゆっくりできるよ!!」 先ほどのぱちゅりぃの亡骸を素通りし、まりさは森の中へと消えていった。 レーダーの電源を入れ、今のまりさの位置情報が問題なく受信できていることを確認する。 強い個体は生存競争で生き残りやすく、別の巣穴へ合流したり、新たな集団を形成して別の住処を開拓したりする。 あのまりさもいつか新しい巣穴へ案内してくれるだろう。そんな期待をしつつ、俺も洞穴の中ほどへと進んでいく。 「ごれからわだじだぢはどうな゛る゛の゛ぉ!? ゆっぐりにがじでね゛ぇ゛!!!」 涙ながらに許しを乞うバカ饅頭共。 「逃がして、だ? あははっ、なにを言ってるんだい? 君たちは一匹残らず皆殺しだよ!?」 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「うるせぇっつってんだろ!!!」 グシュゥ!! 「ぶぇえ゛ッ……!!」 「ゆぐーーーーーっ!!」 「逃げられると思ってんのか!!」 ブチブチィ!! 「びゃ゛あ゛あ゛あ゛っ゛……!!」 「や゛め゛でえ゛え゛え゛え゛え゛!!! も゛うお゛うぢがえる゛うううう!!!」 やれやれ。あいつめ、また遊んでるな……? 「おい」 「せ、先輩っ?」 「なにやってんだ。早く片付けてしまえ」 「も、もう少し遊ばせてくださいよー」 奥の方を見やると、デブれみりゃはまだプリンをパクついていた。 そして驚くべきことに、あれだけたくさんあったプリンがもうなくなりかけていた。 と、新人君への懇願は効果が薄いと思ってか、一匹のまりさが俺の足にまとわりついてきた。 「おじざあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛っ!!! だずげでよ゛お゛お゛お゛ンぶぅッ……!!!」 躊躇なく踏み潰す。 しかし、懲りずにまた一匹のれいむが擦り寄ってくる。 「おじさん!! あのときのおじさんでしょ!?」 リボンに発信機をつけ、逃がしてやったれいむだった。 「ああ、覚えているよ」 「あのときみたいにれいむをにがしてよ!! おねがいだよ!!」 「ゆっ!! れいむだけずるいよ!! わたしたちもにがしてね!!」 また押し合いへし合いとなる。そこへ薄ら笑いを浮かべた新人君が語りかける。 「バカだなぁ君は」 「ゆっ!? れいむはばかじゃないよ!! ゆっくりあやまってね!!」 「みんな見てごらーん。このれいむのリボンを。変なものがついてるだろーう?」 「ゆっ? ほんとうだ!! なぁにこれ!?」 「これは発信機さ。これが君たちの居場所を処理場の人に教えてくれてたんだ。実はこのコはおにいさんたちの友達なんだよ」 「ゆゆッ!? れいむそんなのしらないよ!? うそつきなおにいさんはゆっくりしね!!」 「君は今までよく頑張ってくれたね。お疲れ様。でも君はもう用済みなんだ。だからここでさよならだよ。ぷぷっ」 「れ゛い゛む゛の゛ばがあ゛あ゛あ゛!!」 「う゛ら゛ぎり゛も゛の゛はゆ゛っぐりじねえ゛え゛え゛!!」 「ゆ゛ぐぅぅぅ!!! み゛んなや゛め゛でえ゛え゛え゛え゛!!!」 洞穴内はもうパニック状態だ。 笑いを堪えきれない様子の新人君に問いかける。 「そろそろ満足したか?」 「くくっ……! は、はいっ……! じゃあ一気にやっちまいますか! ふっ……ふひゃひゃひゃひゃ!」 俺たちは、背負った機器から伸びたホースを構え、スイッチを入れる。 「放射ああああああ!!!! うっひゃひゃひゃひゃ!!!」 内部分裂して混乱状態の饅頭共に、霧状の薬品を吹きかける。 「ゆ゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!!?」 霧を吹きかけられたゆっくりたちの身体は、見る見るうちに膨れ上がる。 「な゛、な゛に゛ごれ゛え゛え゛え゛え゛!!!」 「ゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛お゛お゛お゛お゛!!!」 次第に皮が内側から破け始め、その激痛に涙がとめどなく溢れ出る。 「ゆ゛ぐうううううううううううううううううううううううウウウウウウぇ゛ア゛ッ……!!!」 限界まで肥大し、破裂していくゆっくりたち。 この薬品は、饅頭共の体内の餡子を膨張させ、そのまま破裂に至らしめる特殊な薬品なのだ。もちろん人間には無害。 これまでの火攻めや水攻めでかかっていたコストを大幅に減らす、処理場の画期的な新発明だ。 「ゆ……ゆ゛ぐう゛う゛う゛う゛う゛う゛ーーーーーーっ!!!」 死に物狂いで逃げ回る饅頭たち。しかし、広範囲にわたる薬品の噴射から逃れることなどできはしない。 「ウェーーハッハッハッハ!! イーーヒッヒッヒッヒ!!」 破裂する饅頭たちの返り餡子を全身に浴びながら、狂ったように薬品をばら撒き続ける新人君。 ここは彼に任せておこう。俺は薬品を噴霧しながら、奥にいるデブれみりゃの方へと向かった。 「おい」 「う?」 口の周りをカラメルソースでベトベトにした豚がこちらへ振り向く。 「うーーー♪ だーべぢゃーうぞぉーー♪」 豚が食い散らかしたプリンの容器を見る。消費期限も過ぎていない新品だった。 「貴様、どこからプリンを持ち出している」 「うー? れみりゃーはごーまがんのおぜうざまだっどー♪」 パーン! 豚の頬を平手打ちする。 「ぅ……うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!! はだじでえ゛え゛え゛え゛!!!」 パーン! 逃げ出そうとする豚の胸倉をふん掴み、また平手打ち。 「答えろ。このプリンはどこで手に入れた」 「う゛うぅっ……れみ、りゃ、うーーーっ☆」 パーン! 「さっさと答えろ!」 「わ゛ぅ゛ッ……!! ご、ごーじょーっ……!!」 「工場?」 はぁ、なるほど。ちょうどこの辺りにプリンの製造工場があることに思い至った。 「うー……ぷっでぃんもうなぐなっだ……。だがら、まだどりにいぐーー♪」 パーン! 「ヴぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! い゛だい゛い゛い゛い゛い゛っ!!!」 肥え太った手足をじたばたさせ、必死に抵抗する。 「貴様っ」 パーン! 「人様にっ」 パーン! 「どれだけっ」 パーン! 「迷惑をかければっ」 パーン! 「気が済むんだっ!」 パーン! 「や゛べでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛!!! い゛だい゛の゛や゛だあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 涙と鼻水とよだれで顔をグシャグシャにする豚。 すぐにでも殺してやりたいところだが、これだけは聞いておかなければいけない。 「おい、おまえの飼い主は誰だ」 「ぅーー……」 パーン! 「答えろっ!」 「う゛ぅぅぅぅ!!!! ざぐやにい゛い゛づげでや゛る゛ううううう!!!」 「ざぐや……か」 最近、ゆっくりを利用した飼い主の窃盗事件が相次いでいる。 特にれみりゃは扱いやすく、犯罪に活用されるケースが多くなっている。 こいつをいたぶり続けると、そのうち特定の名前や、お兄さん、おじさんといった誰かに助けを求めるのだが、 こうして遺伝子的に組み込まれている咲夜という人物の名前が出てくる場合は、野良ゆっくりであるということなのだ。 飼い主がいる場合は警察に届けなければならないのだが、野良ゆっくりのこいつを生かしておくべき理由はなくなった。 「おまえが与えた経済的損失、せめて死んで償ってもらうからな」 「ぅぅ……? うううぅぅわ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!」 邪魔な翼をもぎ取ったあと、後頭部を鷲掴みにし、顔面を地面に叩きつける。 ガスッ!! 「う゛ぇ゛ア゛ア゛ア゛あ゛あ゛!!! ごべんだざい゛い゛い゛い゛!!!」 右目の眼球が破裂し、前歯がいくつか砕ける。 ガスッ!! 「ぅぶっ……ごボぉお゛っ……!!」 衝撃と共に身体全体を揺さぶられ、体内のプリンを嘔吐する。 ガスッ!! 「ぶゥッ……!!」 後頭部から握り潰さんばかりに突き立てた俺の爪が豚の頭にぐいぐいと食い込み、指先に生温かい肉まんの感触が伝わる。 気持ち悪い! 気持ち悪い! 気持ち悪い! 気持ち悪い! ガスッ!! ガスッ!! ガスッ!! 「あ゛ア゛ッ……!! あ゛がっ……!! ガあ゛ッッ……!!」 やがて顔面の皮が全て剥がれ落ち、肉まんの具から身体が生えている状態となる。 身体はヒクヒクと痙攣し、もはや声を上げようにもヒューヒューというおかしな音しか出ない。 「……気持ち悪い」 わき腹から思い切り蹴飛ばす。肉塊はぐるぐると回転し、頭部の肉を撒き散らしながら宙を舞う。 石ころを蹴飛ばしながら通学路を帰るように、頭部のなくなった豚の身体を何度も蹴飛ばしながら入り口の方へと向かう。 途中で豚の胴体と下半身が千切れてしまった。体内に残っていたプリンがどろりと溢れ出す。 俺はその胴体を踏み潰し、残った下半身を股裂きの要領で引き千切って放り投げてから、新人君へ声をかけた。 「おーい、そろそろ引き上げるぞー。……って、まだやってんのかー?」 新人君は、妊娠中のゆっくりだけを何匹か生かして縛り付け、 同じ妊婦ゆっくりに薬品を少しずつかけて、じわじわと膨れ上がる様を楽しんでいた。 「ゆ゛ぐう゛う゛い゛い゛い゛い゛……!!!」 「苦しいか? ん? おい饅頭、苦しいか? ふひゃひゃひゃ!」 「も゛う゛や゛め゛て゛え゛え゛え゛え゛!!!」 「だずげでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」 「まりさちゃん、君、俺が指でちょっとでも触れたら破裂しちゃうけど、どうする? ねぇ、どうする?」 「ゆ゛ッ……!! ゆ゛ぅ゛ッッ……!!!」 破裂寸前のまりさは、この世のものとは思えないほど不細工な表情で、体中から変な汁を垂れ流し続けている。 ところどころ破けた皮から餡子が溢れ出し、耐え難い激痛に喘いでいる。その耳元で新人君が語りかける。 「これからかわいいかわいい赤ちゃんが産まれるって矢先に、残念だったねぇ♪ じゃ、バイバイ♪」 フッと息を吹きかけると、妊婦まりさはたちまちバシャッと破裂し、新人君の顔を餡子で染めた。 飛び散った餡子は、縛り付けられたほかの妊婦ゆっくりたちの顔にもふりかかる。 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「ゆ゛っ゛ぐ゛り゛ざぜでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」 弾けた妊婦まりさから未成熟の赤ちゃんまりさがコロッとまろび出る。 口の周りについた餡子を舐め回しながら、新人君は今にも崩れ落ちてしまいそうな胎児まりさをそっと手に取り、 ほかの妊婦ゆっくりたちの眼前に掲げ、握りつぶす。そしてその餡子を妊婦ゆっくりたちの顔に塗りたくった。 「あ゛ッ……!!! あヒッ……!!」 壮絶な光景を見せられ、一匹の妊婦れいむは発狂してしまう。 もう一匹の妊婦まりさは流産してしまい、それを示す餡子が下部からどろりと流れ出た。 ショックのあまり、もう言葉を発することもできず、ただヒクヒクと痙攣する。 「おーい、もういいかー?」 腹を抱えて爆笑している新人君に再度声をかけ、区画殲滅用の使い捨て薬品発生器の封を切る。 「ふひゃひゃひゃひゃ!! あ、先輩、もう満足したっす! いやーやっぱ饅頭の断末魔はたまらんっすわー!」 新人君は、ゆっくりを痛めつけることを心底楽しんでいるようだった。 ”できるだけ凄惨なやり方で虐殺し、人間を畏怖させ野に帰す”という国の指針からしても、彼はこの仕事に適任だ。 俺はいつしか虐待することにも飽きてしまって、淡々と仕事をこなすようになってしまった。もう歳かな。 「発信機は回収したか? 盗まれた食料は?」 「え、ええっ。こちらに。飼い主はいないみたいですね。こいつらただの野良ゆっくりの集まりですわ」 「そうか。よし、それじゃあ引き上げるぞ」 「あっ、待って下さいよぉ先輩っ! あのれみりゃはどんな風にぶっ殺したんすかっ? 聞かせてくださいよぉ!」 設置した薬品発生器が辺りを煙で包み込む。 大量のリボンや帽子が散らばる洞穴内。 そこからはもう、物音一つ聞こえない。ただただ甘い香りが充満するのみだった――。 人と共存することを選択しなかったゆっくりたち。 人間界の衣食住を崩壊せしめ、食物連鎖の構造を根底から破壊してしまう害獣。 こいつらをペットに、などと考える人間ももういない。 最初はうるさかった動物愛護団体も、ゆっくりが環境にもたらす深刻な悪影響に口を閉ざさざるを得なくなった。 ゆっくりも、別の世界に生まれていたのなら、もっと幸せに暮らすことができたのかもしれない。 だが、爆発的に繁殖し続けるゆっくりは、この世界では害獣でしかない。狩られ続けるしかない存在なのだ。 俺はせめてもの慰めとして、仕事が終わるとやつらの魂にこう語りかけてやる。 あの世でゆっくりしていってね、と。 完 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/169.html
引っ越し その1 - のどかな草原をゆっくり霊夢の大家族が行進していた。 二組のゆっくり家族が行動を共にしていて母ゆっくりは二匹いた。 他は中くらいのゆっくりが8匹、小さいゆっくりが10匹とかなりの大所帯だ。 これだけゆっくりがいれば食料の確保が大変だ。 今まで暮らしていたゆっくりポイントの周囲は雑草すら無くなり荒地と化してしまったのだ。 なのでゆっくり大家族は食料のために次のゆっくりポイントを探しに移動していた。 これだけゆっくりが多いと、その行進はとても賑やかなものになる。 「ゆっゆっゆっ」 と先頭を行く母ゆっくり。雑草を踏みつぶして道を作りながら他のゆっくりを導く。 「そっちにいったらゆっくりできないよ! 戻ってきてね!!」 これは中ゆっくり。お姉さんらしく隊列を離れようとする小ゆっくりを引き戻す。 「虫さんゆっくり待ってね!!」「お母さんお腹すいたよ!!」「疲れたから乗っけてね!!」 他にも思い思いに行動する小ゆっくり達を隊列中央の母ゆっくりと中ゆっくりが相手しながらゆっくり行進していた。 傍目に見てもとても微笑ましい光景で、実際ゆっくり達はとっても幸せだった。 しばらく進んだところで先頭の母ゆっくりが大木の幹にぽっかりと穴があいているのを見つけた。 「ゆっ! 様子を見てくるね!!」 母ゆっくりは他のゆっくりに待機を促すと大木へと向かっていく。 中を見るとゆっくり魔理沙とゆっくりパチェリー、そしてたくさんの食料が蓄えられていた。 「ゆっくりしていってね!」 「むきゅ、ゆっくりしていってね」 母ゆっくりを確認すると二匹は反射的に挨拶してきた。 「ゆっくりしていくね!!」 母ゆっくりも挨拶を返す。しかしこれはただの挨拶ではない。 少し離れたところでゆっくりしていた他の家族を呼ぶ言葉でもあった。 「ここが次のゆっくりできる場所?」「うわぁ、食べ物いっぱいあるよ!!」「ゆっくり入るね!!」 ゆっくり霊夢の群れがゾロゾロと大木の穴へ、ゆっくり魔理沙とゆっくりパチュリーの家へと入っていく。 ここにきてゆっくり魔理沙が食料の危機を感じた。 こんなたくさんのゆっくり達とゆっくりしたら三日もせずに食料が尽きてゆっくり出来なくなってしまう。 「悪いけどゆっくり出てってね! こんなにいっぱいじゃゆっくり出来ないよ!」 「むきゅー出てって!」 特にゆっくりパチュリーは本気で嫌がっていた。ついさっきまで大好きなゆっくり魔理沙と二人でゆっくりしていたのに邪魔されたのだから。 しかしゆっくり霊夢の群れは、 「ゆっ、他のゆっくりがいるよ!!」「いっしょにゆっくりする?」「ここはれいむたちのおうちだよ!! いいでしょ!!」 ようやく元々住んでいた二匹に気づくゆっくり霊夢たち。 それだけでも失礼だというのに、あろうことか自分たちのおうちだと主張し始める。 「ここはもともと魔理沙のおうちだよ!! ゆっくり出て行ってね!!」 ゆっくり魔理沙も負けじと主張し返す。 「ゆゆっ! ちがうよゆっくりれいむたちのおうちだよ!!」「ゆっくり出来ないゆっくりは仲間に入れてあげないよ!!」「はやく出ていってね!!」 数の暴力(言葉Ver)だ。複数のゆっくり霊夢が一度にゆっくり魔理沙を言葉攻めにする。 ゆっくり魔理沙は気圧されて思わず涙汲んでしまう。 とっても怖かったがせっかく見つけたゆっくり出来る場所を譲るわけにはいかなかった。 貯蔵した食料だって体の弱いゆっくりパチュリーの分までがんばって集めたのだ。 「だめなのぉぉ!! でてってったらでてって~~!!」「むぎゅむぎゅ~~ん!!」 ゆっくり魔理沙は泣き喚きながらゆっくり霊夢の群れに体当たりする。 動きの鈍いゆっくりパチュリーも魔理沙に続いて体当たりする。 だが、その全力の体当たりも母ゆっくりによって逆に弾かれてしまった。 二匹は弾かれた勢いで壁にぶつかってしまう。 「ゆっくり出来ない二匹にはおしおきだね!!」「やっちゃえお母さん!!」 壁にぶつかってフラフラする二匹に母ゆっくりが迫る。 「や、やめてね!! ゆっくりやめてね!!」「む・・・きゅ・・・」 母ゆっくりはその大きな体で二匹を壁に押し付ける。 「むぎゅ・・・ぐるじぃぃぃぃ」 体の弱いゆっくりパチュリーは早くもやばそうだ。 「や”め”で~~~!!! ゆ”っぐりじでただけなのに~~!!」 ゆっくり魔理沙も苦しそうだ。 「「ゆっくり潰れてね!!!」」 母ゆっくりたちはさらに強く二匹を押し付ける。 その圧力にゆっくりパチュリーは潰されてしまう。 「むぎゅ~!!」 ぱちゅんと勢いよく餡子が壁と床に飛び散る。 「あ”あ”あ”~~!!? おあちゅりーー!!」 隣で親友のゆっくりパチュリーが潰されて叫ぶゆっくり魔理沙。しかし悪夢はまだ続いた。 潰されたゆっくりパチュリーが、つぶした母ゆっくりに食べられていた。目の前で。 他の子ゆっくりたちも一緒にゆっくりパチュリーを食べ始めた。 「うっめ! めっちゃうっめ!!」 他のゆっくりを食べるのに慣れているのだろう。 なんの躊躇もなくゆっくりパチュリーだったものを食べていく。 ゆっくり魔理沙はもう見たくなかった。体の力を抜いてつぶされようと思った。 「おかあさん、はやく潰してね!!」 その言葉を聞いた直後ゆっくり魔理沙は餡子と化した。 結局、ゆっくり魔理沙とゆっくりパチュリーのおうちはゆっくり霊夢たちのおうちになった。 しかしそれも長く続かなかった。 「おかあさんお腹すいたよ!!」「次のおうち探そうよ!!」 ゆっくり大家族はものの一週間でおうちにあった食料も、周囲の草花も食べつくしてしまっていた。 こうなればここもすでにゆっくり出来ない場所だ。 「今度はもっと広くて食べ物がいっぱいあるところにいこうね!!」 母ゆっくりはそう言うと先頭に立って歩き始めた。 こうしてゆっくり大家族は再び引っ越しを始めた。 引っ越し その2 - ゆっくり大家族が次に見つけたのは大きな洞窟だった。 四角い形をしていて、入口も四角い穴だった。 いつものように先頭を行く母ゆっくりが洞窟の様子を見る。 中は思ったとおり広く、さらに嬉しいことに以前のゆっくりポイントよりずっとたくさんの食料がそこにはあった。 「ゆゆゆっくりできるよ!!!」 興奮気味な母ゆっくりの声を聞くと待機していたゆっくりはぞろぞろと洞窟へ入っていく。 そこはまさに楽園だった。 果物や野菜といった豪華な食料が洞窟の至る所に並べてあったのだ。 「すごいね!!」「いっぱいゆっくりできるよ!!「ゆっくり~~!」 ゆっくり達はぴょんぴょん飛び跳ねて喜びを表現する。 その中の一匹が野菜の山に飛び込んで食事を始めると、ゆっくり達の大宴会が始まった。 引っ越しの旅でお腹を空かせたゆっくり達は「うっめ!!めっちゃうっめ!!」と感激しながら食事を行う。 そしてお腹いっぱいになるとそのまま眠りについた。 明日起きたらあっちの食べ物を食べよう。その後はゆっくり皆と遊ぼう。 まさに幸せの限りであった。 翌朝 洞窟の入口から漏れる朝の光で目が覚めるとそこは野菜の上だった。 やっぱり昨日のは夢じゃなかったんだ。 「ゆっくりしていってね!!!」 朝の挨拶を済ますと目の前の野菜にかぶりつく。 おいしかった。 「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりねむってたよ!!!」 他のゆっくりたちも徐々に起きだす。 「「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」」 全員起きたところでみんなで挨拶だ。いつもより気持ちのいい挨拶だ。 その時だった。 突然洞窟の入口から漏れる朝の光が遮られた。 何匹かのゆっくりが洞窟の入口に目を向けると見知らぬ生き物がいた。 少なくともゆっくりではないようだ。 「ゆっ?? だれ?ゆっくり出来る人??」 「ゆっくりしていってね!!」 ゆっくり達は特に警戒するでもなくその生き物に挨拶する。 しかしその生き物は答えない。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりあいさつしてね!!」 「ゆっくりできないなら出ていってね!!」 挨拶を返さないことが不満なのか言葉に棘が混じる。 ここでその生き物が声を発した。 「なんだよ・・・これは・・・」 「ゆっ?」 ゆっくり達は訳が分からない。 その生き物は言葉を続ける。 「なんてことをするんだお前たちは。ここは村の食料庫なんだぞ」 口調は冷静だが声は震えていた。 それは怒りだったが鈍感なゆっくり達は気付かない。 むしろその生き物が自分たちのおうちを自分のもののように言ったことに反応した。 「ここはれいむたちのおうちだよ!!」 「勝手にとっちゃだめだよ!!」 「はやく出ていってね!!」 その生き物は少し考えるとその場から去って行った。 ゆっくり達はその様子を見て勝ち誇った。 「もう二度と来ないでね!!」 そして邪魔ものがいなくなったので朝ごはんの続きを食べ始めた。 「むーしゃ」 「むーしゃ」 「「「しあわせー」」」 ご満悦である。 朝ごはんを終えてそろそろ洞窟の外で遊ぼうと思っていた時だった。 ゆっくり達のおうちに何かが飛び込んできた。 それと同時に洞窟の入口が閉じる。 「ゆっ?」「ゆゆゆ??」 ほとんどのゆっくりは何が起きたのか把握できない。せいぜい暗くなったということだ。 ただ、二匹の母ゆっくりだけが閉じ込められたということを理解していた。 出口に向かうと扉に向かって体当たり。しかしビクともしない。 「ゆっくりやめてね!!」 「ゆっくり開けていってね!!」 母ゆっくりたちは外に向かって声を上げる。 しかし反応がない。 代わりに後方、子ゆっくり達のいた方から声が聞こえた。 「ゆ”・・」「う”べべば」 苦しそうな声。 母ゆっくりたちが振り返るとそこには苦しそうにする子供たちの姿があった。 中ゆっくりたちはまだ大丈夫そうだが小ゆっくりたちは泡を吹き白目を向いていた。 「お、があざんん・・・ゆ”っぐりできないよ”・・・どうじで~!!」 中ゆっくりが母ゆっくりに向けて疑問をぶつける。 しかし母ゆっくりも訳が分からなかった。 原因は洞窟が閉じられる前に投げ入れられた物だ。 ゆっくり達は気付いていないが無煙無臭の毒物がそこから噴出していた。 ゆっくり達は徐々に毒に侵されていく。 小ゆっくりはピクピクと動くばかりで声すら出せないようだ。 「ゆっくりなおってね!!」 「いっぱい食べて元気になってね!」 などと言いながら食料を口移ししようとするが、反応はない。 それでも母ゆっくりは食料を与えれば治ると思っているのかそれを続ける。 中ゆっくりはと言うと他のゆっくりに構う余裕はなく、それぞれ苦しんでいた。 毒ガスの発生源から近いゆっくりほど早く泡を吹き、白目を向いて倒れていく。 毒の効果なのだろう。断末魔のうるさいことで定評のあるゆっくり達は静かに死んでいく。 母ゆっくりも大きな体のおかげでしばらく子ゆっくりを看病できたがとうとう倒れて泡を吹き始めた。 「あばばばばば」 「ゆぐっりぶあぁ」 泡を吹き、声らしい声も出ない状態で母ゆっくりは考えた。 なんでこんな目にあったのだろう。 今まで怖い目に逢うこともなくゆっくりと生きてこれたのに。 子ゆっくりが生まれてからはゆっくり出来ないこともあったけど騒がしくて楽しかった。 他のゆっくり家族と行動を共にしてからはもっと楽しかった。 色んな場所へ旅に出たし、色んなゆっくりポイントを見つけた。 そしてこの洞窟は最良の場所だった。ここなら長く住んでも食料は持っただろう。 ああ、これは夢だ。きっと目が覚めたらゆっくりできるだろう。 そう思ったのを最後に母ゆっくりの意識は途絶えた。 一時間が過ぎた。 「そろそろか?」 「あの兎が言うにはそろそろのはずだ」 たくさんのゆっくり霊夢に村の貯蔵庫に荒らされた。 村の一人の青年が今朝そう報告してきた。 棒やら包丁やら武器を用意していたところ一羽の兎が現れた。 「これを使うといいウサ」 そして、 扉を開けるとそこにはゆっくり達が泡を吹いて死んでいた。 貯蔵庫の中央にいたゆっくりも、部屋の隅でうずくまっていたものも・・・すべてだ。 「すごいな・・・」 「さすがえーりん様の薬だ」 「まったくいい気味だべ」 えーりん印の殺ゆっくり剤。ゆっくりだけを静かに殺す毒ガスだった。 さらに優秀なことにこの毒で死んだゆっくりは食しても無害なのだ。 一方この殺ゆっくり剤を村人に渡した兎はというと、貯蔵庫の様子を見に行って 人のいなくなった家から好物のニンジンを集めていた。 彼女は嘘つき兎として有名な因幡てゐ。 今日も人を騙そうとこの村へ寄ったのだがちょうどこの事件が起きていた。 そこでたまたま永遠亭から無断で持ち出していた殺ゆっくり剤を渡したのだ。 「んー、いいことをしたわ」 盗んだニンジンにかじり付きながらそう言う。 本当はゆっくりをいじめて楽しむつもりために持ち出した毒だったのだが、 大量のニンジンを手にすることが出来たのだ。 (そうだ。ニンジンが無くなったことに人間が気づいたらゆっくりのせいにしてやろう) 悪戯兎としてはゆっくりが増えた方が何かと都合よかった。 いじめられるうえに食に関するいたずらは全部ゆっくりのせいにできるからだ。 今度はゆっくり家族を騙して村の食料を食べさせよう。 そしてそれを人間に教えて、ゆっくりをどう処理するのかを観察して楽しむのだ。そしておこぼれをもらう。 ゆっくりは…最高のおもちゃだ。 終
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3368.html
(急に降り出した雨 小さな温泉旅館) 「ふー。酷い目にあった。ずぶ濡れだよ。急に降ってくるんだもんなあ。」 「ようこそお越しくださいました。大変だったでしょう。」 「あのー。すみません。泊まりの客じゃあないんですが、その・・・お風呂、入ってもいいですかね? 見ての通りずぶ濡れで。」 「ええ、どうぞどうぞ。お泊りでない方も大歓迎ですよ。」 「それともう一つ。なんというか・・・非常に厚かましいお願いなんですが・・・」 「お召し物の事ですか?それなら大丈夫ですよ。お客様がお風呂に入られている間に乾かしておきます。 ゆっくり温まっていってください。」 「いやー、助かります。荷物は駅のコインロッカーに預けておいたもんで・・・着替えが無いんですよ。」 「その代わりと言ってはなんですが・・・」 「はい、なんでしょう。」 「今度こちらにいらした時は、うちの旅館に泊まっていってくださいね。」 「ははは。わかりました。このあたりには毎年旅行で来てるんですよ。来年は必ず寄らせて貰います。」 「いやー。いい湯でした。ほんとは露天風呂も楽しみたかったけど、この大雨じゃあ・・・」 「あの、お客様・・・非常に申し上げにくい事なのですが・・・」 「なんです?」 「先ほどニュースで流れていたんですが、町の方へ向かう県道が土砂崩れで通行止めになった様で。 迂回路が無いんですよ。復旧は今日中には無理な様なのですが。」 「そりゃあ丁度いいや。もっとゆっくり温泉に入りたいと思っていたところです。 今日はここに泊る事にしますよ。」 「ええ。このあたりで泊まれるところはうちだけなので、うちに泊まってくださいと言いたいところなんですが。 実はお部屋がすでに全て埋まっておりまして・・・」 「え・・・空いてないんですか?」 「一応、一部屋だけ空いております。空いてはいるんですが・・・ 申し上げにくい事というのは、その空いている部屋の事なんです。」 「?」 「その部屋はちょっといわくつきでして。その・・・出るんですよ・・・」 「出る?幽霊でも出るんですか?」 「その部屋・・・座敷わらしが出るんです。」 (栗の間) 女将に案内されたのは中庭を通った先。『栗の間』と書かれた離れだった。 普段客を泊める事は無いらしいが、毎日綺麗に掃除しているのだろう。こざっぱりとして中々良い部屋だ。 ただ、部屋全体の古めかしい造りや、時を経て変色した柱や天井などが、いかにもといった印象を与える。 普通、座敷わらしを見た者には幸運が訪れると言われるが、ここの座敷わらしは他とは少し違うらしい。 女将の話によると、この部屋で座敷わらしを見た客は神隠しに会うの事があるのだという。 女将からは座敷わらしを見た際の注意をいくつか受けた。 『この部屋に出る座敷わらしは赤いリボンを付けた女の子です。ただ、ちょっと変わった姿なのですが・・・ 座敷わらしをみたら絶対に「ゆっくりして」と言ってはいけません。 座敷わらしが喜んでいつまでも部屋に居座るからです。』 『座敷わらしを見たら「向こうはもっとゆっくりできるよ」と言って部屋の外を指してください。 そうすれば座敷わらしは部屋から出ていきます。』 『あと、座敷わらしを絶対に泣かせない様にしてください。 今までお客様が居なくなった時は、必ず夜中に座敷わらしの泣き声が聞こえてきました。』 『確かに座敷わらしを見た者には幸運が訪れると言われています。 かつてこの部屋で座敷わらしを見たお客様の中にも、財を築いた方が居られた様です。 ですがあまりにも頻繁に神隠しに会うお客様が出るので、先代の頃からこの部屋を使うのを止めたんです。』 『いいですか。くれぐれも好運に与ろうなどと思わず、座敷わらしが出たらすぐに追い出してください。 私どもも何度か見ていますが、追い出したからと言って不幸になる事はありません。 ゆっくりしてと言わない事。向こうはもっとゆっくりできるよと言ってすぐに追い出す事。 絶対に泣かせない事。この三つを必ず守ってください。』 女将はこんな事を言っていたが・・・最後の『泣かせない』というのはともかく、すぐに追い出すのはもったいない。 折角の幸運を掴むチャンスだ。逃す手は無い。幸運の神様の後頭部はつるっぱげだと言うし。 座敷わらしにはぜひともゆっくりしてもらい、俺にも幸運を分けて貰おう。 「ゆーゆー。」 「ん?なんか声がした?」 「ゆー。」 「後ろから・・・出たな!座敷わらしちゃん!会いたかっ・・・うわっ!生首っ!!!」 「ゆぅ?」 「お、女の子の・・・生首・・・幽霊・・・」 「ゆぅゆ?」 「ん?リボン・・・赤いリボン・・・て事は、お前が座敷わらしだな。」 「ゆ♪」 「そうか・・・ふふ・・・ふふふ・・・これで、これで俺も大金持ちに・・・ おっと、そうだ。座敷わらしよ『ゆっくりして』いってくれよな。そして俺を大金持ちにしてくれ。」 「ゆ~♪」 「ははは、何言ってるかは解らないが喜んでるみたいだな。」 俺が「ゆっくりしていってくれ」と言うと座敷わらしは喜んで部屋中を跳ねまわり始めた。 時々こちらに笑顔を向けながら、あっちでゆーゆー、こっちでゆーゆー。 何が楽しいのかは解らないが、部屋の中ではしゃいでいる。 その様を俺はじっと眺めている。なぜだろう?見ていて全然飽きない。 ぽよんぽよんと跳ねまわる彼女の姿に、完全に心を奪われてしまった。 可愛い・・・食べてしまいたいくらいに・・・ 触ってみても大丈夫だろうか?頭を撫でてみたい・・・ いや、違う。撫でるのでは無い。もっと違う何か・・・ なんだ・・・なんだ、このモヤモヤとした気持ち・・・ (覚醒) 「ゆ~~~~~~~。」 調子にのって跳ねまわりすぎたせいだろうか。座敷わらしがテーブルの角に頭をぶつけた。 顔から笑みが消え苦悶の表情を浮かべる。 ゾクゾクッ う・・・なんだ、この感覚。彼女の笑顔が苦しみの表情に変わるのを見たら・・・ 急に心の底から浮かんできた感情。黒い・・・抑えきれない・・・ 『イジメタイ・・・イジメタイ・・・イジメタイ・・・』 「ゆ~。」 彼女が俺にすり寄ってきた。慰めて欲しいのだろうか。 胡坐をかいている俺の足の上にぴょんと跳び乗り、ゆーゆー鳴きながら甘えるような仕草をする。 はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・ 今ここで彼女の額にでこピンしたらどんな顔をするんだろう。どんな声で鳴くんだろう。 座敷わらしを泣かせてはいけない?それがどうした。泣かせなければいいのだろう? なぁに、大丈夫。大丈夫だ。一度だけだ。一度だけ・・・ ビシィッ!!! 渾身の力を込めた中指が彼女の額にヒットする。 「ゆぴぃいいいいいいいい!!!!!」 突然の出来事に驚き飛び上がる。そして遅れて襲ってきた激痛。 あまりの痛みに部屋中をぴょんぴょん飛び回る。 ようやく落ち着くとこちらに向き直る。真っ赤に腫れた額が痛々しい。 「ゆっ!」 怒っている、とでも伝えたいのだろうか。大きく息を吸い込み、ほっぺたをぷくっと膨らませ、 俺の事をキッと睨みつける。 ふ・・・ふふふ・・・ほら、大丈夫。大丈夫。泣いてない。泣いてないよ。 もう一度・・・もう一度・・・泣かせなければいい。泣く前に止めたらいい。 まだ大丈夫。まだ大丈夫。 俺はゆっくりと立ち上がると彼女を捕まえようと近づく。 一歩・・・また一歩・・・ 俺の両手が彼女に近づいていく。彼女の表情から威嚇の色が消え、じりじりと後ずさりしていく。 代わりに顔に浮かんできたのは脅え、恐怖。 はぁ、はぁ、はぁ、その顔!その顔!もっと!もっとだ!もっと見せてくれ!!! ビシィッ!!!!!! 「びぃいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!」 ははっ、はははっ!逃げてる!逃げていく!!! 痛みで、恐怖で、顔をくしゃくしゃに歪ませて! こんな狭い部屋で、どこに逃げようと言うのかね! 『ニガサン・・・』 ははははっ!!!無駄無駄!ほうら、捕まえた! 暴れてる!暴れてる!あはははははははははははははははははははははは! 次は何をする?何をする?ねえ、何をしようか? 叩く?抓る?引っ張る?焼く? うふふふふ・・・そうだ!閉じ込めちゃえ! この花瓶・・・丁度いい大きさ。これを上から被せて・・・ 「くらいよ!こわいよ!だして!ここからだして!」 「やめて!おねがい!れいむをいじめないで!!!」 あはっ!喋るんだね!喋れるんだね! いいよ!いいよお!もっと!もっと叫んで!叫び声を聞かせてくれっ!!!悲鳴を!悲鳴を!悲鳴を! 「おねがい・・・ここからだしてぇ・・・」 いいよぉ。だしてあげるよぉ。さあれいむ、君の悲鳴を聞かせておくれ。 「いたいっ!いたいよ!かみをひっぱらないでね!」 「おろしてね!ゆっくりおろしてね!」 うふっ!うふふっ!ライター・・・ライター・・・ライター・・・どこいった? あった!これで・・・これで・・・うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ・・・ 「ゆぎゃあああああああああああああああああああああ!!!!!!」 「あじゅいいいいいいいい!!!!あじゅいよおおおおおおおおお!!!!!!」 「だずげで!だれがだずげでよおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」 はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・もう・・・もう駄目だ・・・ 「ゆええええええええええええん!ゆえええええええええええええん!!!」 辺り一帯に響き渡るほどの大声。れいむは遂に泣き出した。 その泣き声に呼応するかの様に、男に異変が起きる。 眼は真っ赤に血走り、口から牙が生え、色白で華奢な青年が赤黒い大男に変わっていた。 『ヒャア!もう我慢できねえ!gy・・・』 (翌朝) 「お客さん、お客さん。ご無事ですか?」 「返事がありませんね・・・」 「失礼しますよ。」 女将と女中が部屋の中に入る。中には誰もいない。 「やっぱり、いませんね・・・神隠しにあったんでしょうか。」 「たぶん・・・やっぱりこの部屋は使ってはいけなかったんだ。私のせい・・・」 「ちゃんと注意はしたんですから、あまり自分を責めないほうが・・・」 「・・・」 「ところで、神隠しにあった人はその後どうなるんですか? 映画みたいに後でひょっこり現れるとか?」 「私も詳しくは知らないんだけどね。神隠しにあったひとは、もう戻ってこれないみたい。 言い伝えによるとね、どこか別の世界に連れて行かれるらしい。」 「別の世界・・・」 「そして姿を鬼に変えられて、鬼としてそこで一生を過ごすんだって。」 end 作者名 ツェ 今まで書いたもの 「ゆっくりTVショッピング」 「消えたゆっくり」 「飛蝗」 「街」 「童謡」 「ある研究者の日記」 「短編集」 「嘘」 「こんな台詞を聞くと・・・」 「七匹のゆっくり」 「はじめてのひとりぐらし」 「狂気」 「ヤブ」 「ゆ狩りー1」 「ゆ狩りー2」 「母をたずねて三里」 「水夫と学者とゆっくりと」 「泣きゆっくり」 「ふゅーじょんしましょっ♪」 「ゆっくり理髪店」 「ずっと・・・(前)」 「ずっと・・・(後)」 「シャッターチャンス」
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/106.html
第3話 ゆっくりたちの、実にゆっくりとした一週間 一日目 天高い秋晴れの空が広がっていた。 小春日和の朗らかな日差しを受けて、二匹のゆっくりたちは今日も元気に跳ねまわる。 ゆっくりまりさに誘われて、ゆっくりれいむは追うように魔法の森へ。 今は二匹連なって仲間睦まじく秋空を飛ぶトンボを、わき目もふらず追いかけっこ。 しっとりと濡れた露草の藪を踏み越えて、たどり着いたのは森の奥の開けた野原だった。 流れ込む肌寒い秋風は、トンボの細い体を宙へ高く吹き上げる。 「ゆー! ゆっくりしていってね!」 ゆっくり二匹の願いもむなしく、トンボは風をとらえて青く高く秋の空へ。 ぴょんぴょんと口を開いて飛び上がる二匹。だが届くわけもない。 トンボを見送るゆっくりまりさはしょげ返った表情。 口寂しいのか、茂みのクコの実をむしゃむしゃとほおばる。 そして、ぷくうと膨れ面。 「おなか空いたよ、おうちかえる!」 ゆっくりまりさの見つめる東の空は深く青みがかり、黄昏の近さを思い出させる。そろそろ暖かなねぐらに替える頃。 けれど、ゆっくりれいむは承知しない。 「まだちょっと早いから、ゆっくりしていこうね!」 遊び足りないと飛び跳ねながら訴ってくる。 まりさの傍へすりよって、その帽子のあたりにすりすりとほっぺをすりつけた。 この上ない友愛の仕草に、とろんと赤みがかるまりさの表情。 「ゆ……ゆっくりする……」 たやすく屈するまりさだった。 こうして始まった、今日最後の遊び場は生い茂るススキの野原。 人の姿も隠れそうなその場所で遊ぶ種目は決まっていた。 そう、かくれんぼ。 「ゆっくり30秒数えてね!」 目をぎゅっと瞑るまりさに声をかけて、ススキに身を沈めこむゆっくりれいむだが。 「みつけた!!!」 あっさりと見つけ出すゆっくりまりさ。 「?」 きょとんとした表情で不思議を表現するれいむにまりさはフと不適な笑い。 隠れる一帯のススキが押し倒されて道となっていることを、まりさは教えようとはしなかった。 鬼が交代となり、今度はれいむが探し回る番。 しかし、れいむの失敗を目のあたりにしたためか、まりさは中々見つからない。 ススキの下、藪の中、木陰。目に入るところを探し回ってもどこにも見当たらなかった。 「まりさ、どこー?」 太陽が山々に姿を隠し、暗がりが降り始めて、急に心細さに襲われるゆっくりれいむ。 日が完全に沈めば、野犬の群れに出くわしかねない。 「ゆっくりしないで、でてきてね!」 ほとんど涙目で森を走り回る。 「れいむ、こうさん?」 すると、意外なところからまりさの声が聞こえてきた。 そこは荒れ果てた家屋。魔法の森に暮らす数人のモノ者好きがいるらしいが、この廃屋は誰かのかつての住処なのだろうか。 廃屋の庭は伸び放題の藪になっており、その草むらから石積みブロックで囲った建造物がにょっきり顔を覗かせていた。 幅は1メートルぐらいだろうか。人が建てたらしい、しっかりとした枠組み。その傍らに一本の柱がのびて、吊り下げられていたのは錆びた滑車。だが、繋がれていただろう綱はすでに朽ち果てて残骸が絡みつくのみだった。近くに底の抜けた大きな桶が転がっているのが目に入るが、ゆっくりたちには木っ端にしか見えない。 そんな残骸よりもゆっくりれいむの興味を占めていたのは、建造物の上で得意げにふんぞり返るゆっくりまりさ。 建造物の上に渡された粗末な板の上から、まりさはニヤと不敵な表情で笑いかけてくる。 「ここを知っているのは、わたしたちだけだよ!」 その言葉に、れいむは素敵な遊び場を見つけ出したことに気づいた。 朽ちた廃屋を恐る恐る探る二匹。ソファの一つでも残っていたら、その上でとびはねて埃を払い、新たなゆっくりスペースにできるかもしれない。 そこはきっと優雅なゆっくりの一時。自分たちだけのゆっくり城。 「うっとりー!」 あらぬ方向へ躍りだした夢に、ゆっくりれいむの表情も緩みがち。 「れいむ! 明日から、ここを探検しようね!」 まりさの言葉を、喜色満面で受け止める。 「うん、やくそくだよ!」 胸躍らせるわくわくに、いてもたってもいられない。 明日からの大冒険に弾む心のまま、れいむはまりさへと弾み寄る。 大きくジャンプ。まりさの元へと飛びのった。 まりさも身を摺り寄せて親友に応える。 「ゆゆゆ……」 「ゆっゆっゆ!」 とろけそうな嬌声で、二匹は芯からの喜びを訴えあう。でも、まだ足りない。この嬉しさをあらわすには、アレしかなかった。 ゆっくり二匹は狭い板の上で、身をかがめる。 引き伸ばされたゴムがはじけるように、この日一番の見事な跳躍。 「ゆっくりしていってね!」 その頂点で放たれたのは、黄昏の秋空に響き渡るゆっくり二匹の美しい唱和だった。 陶酔の表情のまま、二匹は同時に板の上へ落下していく。 どすんと、景気のいい音をたてて板で弾むゆっくりの全身。 途端に体の下で鳴った、くぐもった音。 なんだろう。顔を見合わようとするゆっくり二匹。 だが、視線が合う間もあらばこそ、お互いの顔が大きくぶれだした。 「ゆっ!?」 めきという乾いた音が、へし折られる木の音だと気づいたときにはもう遅い。 二匹は板の下に急激に落ちこんでいく。 ぞわりと総毛立つ感覚。 次の瞬間、慣性に捕らわれた二匹の体は真っさかさまに下へ。 一瞬、見下ろした二匹の目の前には、どこまでも広がる何も無い暗闇。 まりさがのっていた建築物は、塞がれることなく板一枚で封印されていた古井戸だった。 二匹が弾んでへしおったのは、まさにその封印の板。 突き破った二匹の落下を受け止めるものはなにもない。 「ゆ、ゆっくりー!」 遠ざかる絶叫も井戸に吸い込まれて、すぐに何も聞こえなくなる。 後に残されたのは静寂。 やがて太陽はすでに山間に没して、秋の寒々とした夜気が漂いだす。 一斉に鳴き始めるコオロギの声。 何事も無かったかのように深まり行く秋の夕暮れだった。 二日目 「ゆっくり! ゆっくりしていってね!」 必死の呼びかけが、何度もゆっくりれいむを揺さぶった。 ゆっくりまりさのやけに近くからの呼び声。 ようやく目を覚ましつつある、寝ぼけ眼のれいむ。でも、まだ夜中なんだから眠らせて欲しい。 ここは見渡す限りの暗がり。 もっとゆっくりすればいいのに。 「ゆ……? ゆゆゆっ!?」 そんな思いをまりさに伝えようとして、ようやく自分の片頬を圧迫する固い感覚に気づいた。 もう片方の頬に押し付けられていたのは柔らかい感覚。 耳の近くでまりさの息遣いがして、その感触がまりさであることを確信する。 お互いのほっぺたがぴったりくっついてその体温の暖かさが心地いいのだけど、この暗がりはじめじめと蒸していて、べっとりとはりつく感触。ちょっとだけ離れたい。 でも、できなかった。前にも後ろにも動けなかい。跳び上がることも、押し付けられたまりさの圧力に遮られてしまう。 「ゆっくり離れてね!」 ゆっくりれいむのお願いに、ゆっくりまりさの体がわずかに震えた。 「動けない……!」 震えて、泣きそうな声。 どうしたのだろう。悲しそうなまりさを慰めたい。 でも、自分も身動き一つできず、ただ視線だけを走らせる。 れいむの周囲は相変わらずの暗闇だったが、闇に目が慣れてきたのか暗がりにぼうと浮き上がるまりさらしき輪郭。だが、自分を押さえつける石の感触の正体がつかめない。 ようやく視界に変化があったのは、視線を真上に向けたとき。 くっきりと、丸く切り取られた青空がはるか遠くに見えた。 太陽はまだ低いのか光が差し込むことはなく、ただ入り口付近の朧に眩しい。 れいむは、自分がどんなところにいるのかようやく悟った。 井戸という知識はゆっくりにはない。深い穴の途中にひっかかって身動きできない状況を、絶望という言葉で理解できただけだ。同じ方向を見て、ほっぺたをあわせている自分とまりさ。その両側はがっしりとした石積みが押さえ込んで身動きできない。 いや、それは幸運なことだろう。壁につっかえなければ、井戸の底へまっさかさまに落ちていくだけだ。 けれど、石積みの壁は古びているのか、ゆっくりたちが身じろぐとぽろぽろと壁面がこすれて下に落ちていく。 わずかな間に続いて、真下から響いてくる水の音。 「ゆゆゆゆ!」 ゆっくり二匹を恐怖に至らしめたのは、穴のさらなる深さよりも水で満たされているだろう、その奥底だった。 水溜りや少しの雨なら、はしゃいで遊びまわることもできるゆっくり。 だが、長時間全身が水につかれば、皮がぶよぶよにふやけて、やがては中身を水中に吐き散らすはめになる。 だから、雨の日は巣穴で家族とゆっくり過ごすのがゆっくりたちの常識だった。 今は二匹がぴったりと穴につっかえているからいいが、もし外れて水中に落ちた場合、待っているのは緩慢な死、腐敗。 「ゆーっ!」 一際高いゆっくりれいむの泣き声。 だが、果たしてこの井戸から外に届いたかどうか。 井戸の中は雫の落ちるほどが響き渡るほどの、閉ざされた静寂。望みは薄かった。 れいむの絶望が恐怖に変わる。 「いや! いやいやいやいや!」 「おちついて、ゆっくりしてね!」 取り乱したれいむに、ゆっくりまりさの声が届かない。 「ゆっくりしないと落ちるううう!」 とうとう、まりさも涙声。 その切羽詰った叫びとともに、れいむの壁に面した頬が、ずりと壁面を擦った。 ほんのわずかながらも、強烈に肌がざわつく落下の感覚。 「ゆ!」 もはや、身じろぎもできないれいむ。 「ね゛っ。ゆ゛っぐり゛じよう!」 まりさの懇願混じりの声に頷くこともできなかった。 穴の中央付近でひっかかっているこの均衡が、容易く壊れることをようやく理解する。 二匹は、ほぼ平行につっかえているが、実感まりさの方が下がり気味だった。 ただ、壊れかけた石壁が一箇所飛び出して、ゆっくりまりさの顎にぎっちりくいこんでいる。 そこをとっかりに二匹は横からの圧力で落下を免れていた。ごくわずかな幸運。 それでも、ほんの一時だけ死に猶予を与えているだけにしか思えなくて、ゆっくりれいむの喉を悲しみが突き上げる。 「ゆっ、ゆっ……!」 ゆっくりまりさも泣いていた。しゃくりあげることすら許されない、この絶望に。 どれほど悲嘆に暮れていただろう。 れいむは周囲が明るく照らし出されていることに気がついた。 日差しが高くなり、井戸の上空から一直線に差し込む光。 湿って凍えたゆっくり二匹をぽっかぽかに包み込む。 「暖かいね」 「うん」 れいむの呟きに、短いまりさの返事。 「気持ちいいね」 「うん」 相変わらずのまりさの短い返事。でもゆっくりと言葉を交わせたことがれいむは嬉しかった。 ほかほかの日向にほっこりと表情を和らげる二匹。太陽が隠れるまで半刻を要さないだろうが、一時のゆっくりを存分に味わう。 光に照らし出されて周囲の様子が明らかになり、二匹は少しだけ落ち着きを取り戻していた。 概ね、予想通りの井戸の光景。忘れ去られた井戸の中で、ほっぺをひしゃげてよりそう二匹の姿はひどくユーモラス。二匹がへばりつく石積みの壁には、ところどころ穴があいて、広がる光の領域に慌てて逃げこむ蟻やムカデ、イモリの姿があった。 れいむがその壁に向けて精一杯舌をのばす。舌に張り付く数匹の蟻んこたち。 ぺろっと飲み込んで、むーしゃむーしゃと咀嚼する。あんまり幸せな味ではなかったが、食べることができたという事実がれいむにわずかな希望を与えた。 このまま、しのいで張り付いていれば誰か井戸を覗き込む人が現れるかもしれない。そうだ、森に行こうと誘ったのはまりさ。誰かに行き先を教えていれば、家族のゆっくりや仲間が探しにきてくれるかもしれない。言っていなくても、まりさの行動範囲に魔法の森は必ず含まれる。探す目的地の一つとなるだろう。 見つけてもらえば、また存分に太陽の下でゆっくりできる! 「まりさ、あのね!」 その思い付きがもたらした希望、喜びを、ほかならぬまりさと分け合いたかった。 だが、まりさは先ほどまでの日向ぼっこの表情が一変し、またじんわりと涙を流していた。唇をかみ締め、ひっくひっくとえづく。 「まりさ、どうしたの?」 「ゆっ、ゆっぐり゛痛ぐなっでぎだ!」 二匹の重みを受ける石壁のでっぱり。そこに接したまりさの顎にうっすらと走る一筋の線。石壁に擦ってできたわずかな切り傷。 まりさの顔の影になって見えないれいむに、にわかに募る不安。 「だいじょうぶ!」 「……うん、ゆっくりしていれば治る」 実際、日向でのんびりしていれば、一日で薄皮がはって消えるだけの傷。 まりさは気丈な言葉でれいむを安心させてくれる。 それでも、自分たちを助けるために負ったその傷を、なめて労わってあげられないのがれいむには悔しい。 だから、せめて心を労わりたい。 「ここを知っている誰かがきっときてくれるよ、ゆっくり頑張ろうね!」 きっと、森に遊びに言ったことを知った誰かが気づいてくれるよ! そんな、言葉にするのももどかしい想いを口にする。 まりさはどんな表情をしたのだろう。 れいむと同じく希望の取り戻した笑顔を浮かべたのだろうか。 だが、わからない。 ほとんど次の瞬間、井戸は暗闇に沈んでしまっていた。 目蓋に残った光の斑点は、井戸から引き上げていった陽光の残滓。 あまりにも短い日差しの終わりに、わかっていながらもれいむは打ちのめされる。 黙り込んでしまったゆっくり二匹。 「ここを見つけたせいで……ごめんね」 沈黙を破ったのは闇のなかからの、か細いまりさの声。 泣きすがる、哀れみを乞う響き。 れいむは、親友のそんな声を聞きたくなかった。 心が滅入って、ついつい尻馬にのって相手を責めたくなる気持ちを跳ね除けるように叫んでいた。 「違うよ! れいむがもっと遊ぼうといわなければよかったんだよ!」 だが、空元気も、傷を舐めあうことも二人に救いをもたらさない。 それ以上何を言えばいいのかわからず、上を見上げた。 いつか現れるかもしれない仲間の姿を見逃さないよう、ひたすらに空を見ていた。 日暮れの早まる秋の空。 色合いが朱に染まる夕焼け、数刻もしないうちに夜が訪れる。 井戸の中は、すでに光一つない宵闇。 もう、ゆっくりたちが出歩ける時間ではない。 どこから落ちる水滴の音と、カサカサとはいまわる虫たちの音だけが異様に響きわたる。 「ここから出して」 「おうちかえる」 ぽつりと時折こぼれる二匹の呟き。 だが、やがてそのささやかな願いを飲み込むのは圧倒的な暗闇。 嗚咽すらも押しつぶすような静寂に二匹の存在は沈み込む。 三日目 ゆっくりれいむは家族の夢を見ていた。 藪の奥の横穴にひっそりとある暖かな我が家。 姉妹れいむたちと押し合いへし合いして遊んでいると、お母さんれいむが登場。下膨れたした顔で、「ゆっ! ゆっ!」と娘たちを叱る。 渋々寝床に入るゆっくりれいむたち。でも、少しでお母さんれいむの傍に近寄れるように動き出して、再び始まる大騒動。 結局、お母さんれいむにぴったりと全員がよりそって、ぽかぽかの体温を感じながらゆっくりと眠りについた。 ゆっくりお母さんはぷっくり膨らんだほっぺを娘たちに押し当てたまま「ゆー! ゆ-!」といつもの子守唄。娘たちを優しく眠りに導いてくれる。 絶対的な安堵を与えてくれる母親の懐。ゆっくりれいむはただ幸せな夢を見ていればいい。よだれをたらしつつ、存分にまどろみを貪る。 これ以上ゆっくりしようがないほどにゆったりとした心。 幸福に包まれて、れいむは気ままに明日を思う。 明日、目が覚めたら何をして遊ぼうかな。 最近、ゆっくりまりさとばっかり遊んでいたからたまには他の皆も入れて一日中ゆっくりするのもいいかもしれない。 あれこれ考えながら眠りへと落ちていくれいむ。 さあ、次に目を覚ませばいつもの楽しい毎日の始まりだ…… 期待に心を弾ませて目を覚まそうとするゆっくりれいむ。 だが、れいむが感じたのは、ほっぺたをぽつりと濡らす雫だった。 「冷たいよ!」 姉妹か誰かの悪戯かと、寝ぼけ眼で不満を口にした。 だが、顔全体に降り続く雫が急速にゆっくりれいむの眠気を奪い去っていく。 それは、芯まで凍えそうな秋雨だった。 現実を思い知らされる井戸の暗闇。 上を見上げれば、丸く切り取られた空はうんざりするほどに暗い雲の色。 もっとゆっくり夢をみていたかった。恨めしげに天を睨むが、れいむの髪やほっぺを叩くような雨足は弱まることはなかった。石壁からはひっきりなしに伝い落ちる雨だれ。 いつ止むとも知れないどんよりとした空模様だった。 そんな天気を眺めていたれいむは、ふと感じた違和感に小首を傾げる。 井戸の出口まで、少し遠くなったような? 「起きたなら、ふんばってね!」 必死なまりさの声に、違和感の正体に気づく。 濡れてグズグズに緩んだ頬。壁面との抵抗が極端に弱まっていた。 わずかながら、ずり落ちつつある二匹のゆっくり。 「ゆ、ゆっくり!」 青ざめてぎゅっと頬をよせると落下は一端停止する。まだ、さしたる力を込めずともふんばることはできそうだ。 だが、力を完全に抜くとすぐさま底へ落ち込みそう。 数秒足りとも力を緩められない。24時間中続く、無慈悲な義務がここに生まれた。 もはや、さきほどまでのように無防備に寝入ることはできない。 「ああああ! ゆっくりでぎないよお!!!」 ゆっくりまりさの叫びは、今のれいむの悲嘆そのものだった。 二匹、力が弱まらないようにぎゅっと口結んでふんばって、それでもぽろぽろと涙があふれてくる。 だが、これはいつまでも続く地獄ではないと、れいむは信じたい。 昨日から抱いている希望、探しにきてくれる友人や家族のことがれいむの脳裏に浮かぶ。 「まりさ、がんばろうね!」 今頃、お母さんれいむや他のゆっくりまりさたちがこの雨の中を探し回っているのだろう。 この井戸のあるあばら家は魔法の森のほど近く。 うまくいけば一日もたたず探索範囲に入る。 問題は、それまでの数日を耐えられるかどうか。 「だから、もう少しがんばろうね!」 まりさを落ち着かせるための笑顔向けて、れいむの健気な呼びかけ。 だが、まりさの表情はますますクシャクシャの泣き顔になっていく。 「ひっく……っ、がんばっても……どうせ、誰もきてくれないよおおお!」 突然の嗚咽交じりの絶叫に、びくんと震えるれいむの全身。 単なる弱音ではなく、確信をもったまりさの口調にれいむの顔から笑顔が引けていく。 変わってれいむの顔に張り付いたのは不審。 「どうして、そんなことをいうの?」 「だって……」 応えるまりさの顔は、もう雨と涙でどろどろだった。 「だって、皆には霧の湖で遊ぶと言ったんだもん!!!」 「ゆ?」 れいむの脳みそはまりさの言葉を理解しきれず、硬直する。 わかっっていたのは、霧の湖はこことはまるで反対側にあることだけ。 その意味がじんわりとれいむに染み入ってくる。 ガクガク震えだす全身。 どんどん強くなっていく。 止まらない。 体を震わしながらこみ上げてくるのは、得体の知れないふつふつとした感情。怒りか悲しみかもはや形をもたないままに沸点を超えた。 「まっ!! ま゛り゛ざあああ、なんでなの! なんでえええ!!!」 困惑、怒り、やるせなさ、感情のにごりが煮えたぎるれいむの狂乱だった。 「ごめんなさい! ごめんなさい! ごめ゛んな゛ざいいいいいいい!」 わんわんと声をあげて、しゃくりあげながら謝罪を繰り返すまりさ。 昨日までのれいむなら、親友のそんな様子を見ればそっとよりそって泣き止むのを待っていただろう。 だが、もはやれいむは容赦しない。 「はやく説明してね!!!」 激しい詰問に、ひぃと息を飲むゆっくりまりさ。 「ゆっくりパチュリーやゆっくりアリスたちに邪魔されずに、れいむと一緒に遊びたかったのおお!!!」 その言葉に、れいむはいっつもまりさにくっついて離れない二匹のことを思い出す。 まりさと遊んでいると、ゆっくりパチュリーがどこからともなく這い出して、二人の後をゆっくりとついてくる。そうなれば、弾むように力一杯遊ぶことはできない。パチュリーを中心にして静かに過ごすゆっくり。 ゆっくりアリスはもっと扱いが難しい種。普段は遊びに誘っても嫌がって一緒に遊びにはいかない。だけど、諦めて他のゆっくりと遊んでいると木陰からじっとりと見つめてきて、もう一度誘わない限り一日中続くのだ。結局、お願いして一緒に遊んでもらうことになる。 だが、れいむとまりさは知らなかった。ゆっくりアリスが本当に問題行動を起こす発情期のことを。 発情期を迎えたゆっくりアリスは、無理やりゆっくりまりさと交尾しようと森や平原などいたるところを徘徊し、見つけるなり集団で襲い掛かってくる。お母さんれいむのように成熟しきった個体同士なら普通に交配する限り、時間はかかるが何度でも子を生める。だが、まだ青いゆっくりまりさにとって、無理やりの交尾は極めて危険だった。ある程度の子供が生えるものの、母体のゆっくりまりさはショックのあまりに白目をむいてそのまま朽ち果ててしまう。 凄惨を極めたのが、ゆっくりアリスの群れ全体が発情した三年前。ゆっくりまりさの集落がいくつも全滅して、やがて一斉に生まれてきた子供たちがゆっくりまりさの生息数大爆発を招くことになる。野草や昆虫たちを手当たり次第に 食い尽くすゆっくりまりさたち。ゆっくりまりさと交配しやすい種であるゆっくりれいむも数を増やして、生態系の破壊は広がっていった。その処理策として設立されたのが、ゆっくり加工所だった。 もちろん、ゆっくりたちはそんな事実は知る由も無いが、ゆっくりアリスのどこかただならぬ雰囲気は薄々と察してはいた。 結局、なぜかウマの合うゆっくりまりさとゆっくりれいむで遊ぶのが一番楽しいのだ。 でも、だからといって親友のついた取り返しのつかない嘘を許せすことができない。 大きく膨らんだ希望が、そのまま絶望の重みとなった憤り。 その熱い塊をぶつける対象を目前に見つけて、怒りが爆ぜた。 「嘘つきまりさなんて大っ嫌い!」 憤怒が、井戸の中でぐわんぐわんと鮮烈に反響していた。 「ごめ゛んな゛ざい、ごめ゛んな゛ざい、ごめ゛んな゛ざい……」 念仏のように繰り返すまりさの態度。だが、その惨めさがますますれいむの熱を吹き上げさせる。 後どれだけの時間をここですごせばいいのか。 いや、もはや助けられることすら望み薄だろう。このまま家族にも知られることなく、干乾びて朽ち果てていくゆっくりたち。げっそりと痩せて、やがては水の中へすべり落ちる。 そうなれば運命は決まっていた。ゆっくりたちの皮は水に弱い。ぐにゃぐにゃに膨らんで、皮はいずれ破れるだろう。 まず、中身が水や外気にさらされる。やがてはじまるのは腐敗。自分の体が耐え難い異臭を放ち、中から朽ち果てていく長い長い悪夢。早く意識が途絶えることをひたすらに願いながら、ゆらゆらと汚水を漂う。 おぞましい想像に、れいむの体がぞわりと悪寒に震えた。 れいむはそんな未来など、井戸に落下してから一度たりとも考えたことはなかった。 探し回ってこの家をみつける仲間のゆっくりたち。近づくとかすかなゆっくりの声が聞こえてきて、覗き込んだ先にあったのは仲間の窮地。慌てて集まる沢山のゆっくりたち。探し出されてきた長いロープが井戸にたらされ、中の二匹が ロープを噛みしめるなり一気にひっぱりだされる。外に出られたら、すぐにうち帰ってお母さんれいむを安心させよう。 それが、数分前までれいむが夢想していた未来。もう、消え失せてしまった未来絵図。 それもこれも、このまりさのせいだ。こいつが馬鹿なことを言ったばかりに全部終わってしまった。 こいつのせいで……死ぬ。 「い゛や゛だあっ! ま゛り゛ざのぜいで、じにだぐないいい!」 もうれいむは止まらない。 「ま゛り゛ざの、ばがああっ! ま゛り゛ざだげ、じね!」 「ゆっ! ゆ゛う゛う゛うううううっ!!!」 断末魔のような悲鳴を上げるまりさを黙らせようとするかのように、れいむはぐいぐいとまりさを壁に押し付ける。 「泣いてないで、落ちないようにしてね!」 れいむの棘のこもった言葉に従って、律儀に押し返すまりさ。 もう、何も喋らない二匹。 ゆっくりと、もう泣きたくなるぐらいにゆっくりと時間は過ぎていく。 井戸の中を、妖怪の山から吹き降りてきた風が入り込み、濡れた体をぞくりと振るわせた。 寒い。 隣のまりさの体温がなければ、野宿すら耐えられない季節になりつつあった。 鼻をすすりながら、懸命に押してくるまりさの暖かな全身。 それだけがれいむに温もりを与えてくれた。 だが、耳朶に届くのは嗚咽交じりの侘び。 「ごめ゛んな゛ざあああい……」 泣きすがり、許しを乞う陰鬱な声。 井戸の底とで命を預けあうまりさが繰り返す哀願に、すううと冷えていくれいむの心。 まるで、自分のほうが取り返しのつかないことをしてしまったような痛みが胸を刺す。 今はまりさだけが頼りなのに。 自分と同じ苦しみを背負う相手を一方的に責めて、自分は何がしたかったのだろう。 もう何もかも嫌になる。 「だれかぁ……はやくたすけてえ……」 見上げる井戸の上。 黒ずんだ雨雲に占められた、あいかわらずの代わり映えのない空とその向こうにいるかも知れない神様に、ゆっくりれいむはひたすら祈っていた。 だが、畜生に神はいない。 井戸を覗き込む人影どころか、厚い雲に隠れたまま太陽すら姿を見せないまま、いつしか空は夜の色に沈む。 救いは、ようやく雨足を弱めつつある丸一日降り続いていた雨。 打ちつける雨の粒も、今は優しく降りしきる霧雨だった。 だが、代わって二匹を苛むのは夜半の冷え込みの厳しさ。もはや冬の始まりと大差がない。 「ゆゆゆ……」 れいむの舌の根も凍えて言葉を吐き出せない。 もうじき初霜がおりてもおかしくない秋の日暮れだった。 凍えた体は力が上手く入らない。希望なき奮闘にも関わらず、二匹は少しずつ、井戸の底へと近づいていく。 その都度、腐ったような水の匂いが濃くなって、れいむの喉にまとわりつく。 ぶわあんと、反響するカトンボの羽音がひどく耳障り。 水際に近寄るほど濃厚に漂いはじめる死の気配。 「……い」 れいむの耳がまりさの呟きを拾う。 また「ごめんなさい」だろうか。 朦朧とした口ぶりで繰り返すその言葉に、れいむに湧き上がるのは逆に罪悪感。 「もういいから、謝らないでね!」 精一杯の優しさをこめて呼びかける。 だが、反応は予想外のものだった。 「違うのおお」 それは、半泣きのまりさのうめき。 「かゆいの、かゆいの、すっごくかゆいの……」 しみこんだ水分を枯れ果てるまで流すかのように、だらだらとこぼれ落ちる涙。 余程の痒み襲われているのか、ぶるぶると痙攣のように震えだした。 「傷が、顎のあたりが痒いいい! ジクジク、かゆいいいいい!!!」 みっともなく、幼子のように泣き叫ぶまりさ。 恐らく、患部は最初に井戸を落下したときにおった顎付近の傷。 れいむからはまりさの顔越しの位置になって、傷の様子はわからない。闇の中、懸命に舌を伸ばしている様子のまりさも、患部にまで舌がのびずもどかしい模様。よほど痒いのだろう、なおも舌を伸ばして時折えづく。 「き、きっと傷がカサブタになろうとしているんだよ。痒いけど、我慢だよ!」 少しでも前向きな言葉を口にして、まりさの気を紛らわそうとする。 けれども、まりさを襲う痒みは尋常ではないようだ。 「痒いよう、痒いよう……」 繰り返すまりさの嗚咽を聞きながら、三日目の夜はふけていく。 眠って底に滑落しないよう、唇をぎゅっとかみ締めるだけの夜は、ひたすらに長い。 中編
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/5258.html
注意 「」はゆっくりの発言です。 『』は人間の発言です。 善良なゆっくりがひどい目にあいます。 虐待なし とある公園の奥、プラスチック製の家の中にはまりさ一家がいた。 構成はまりさ・れいむと子ゆっくりのれいむとまりさの4ゆん家族である。 この家族は地域ゆっくりである。 地域ゆっくりとは、人間に迷惑をかけず、公園の掃除やゲスゆっくりの駆除などの条件をもとに 最低限の衣食住が認められているゆっくりのことである。 子供も2ゆんまでしか認められていない。 家のプラスチックハウスも公園を管理する市からのものである。 時間は夜11時。電気のないプラスチックハウスでは家族全員が夢の中であった。 「ゆぴーゆぴー」 「おいしいのじぇ…」 「ゆうゆう…」 「ZZZZ」 そんな彼女らの休息の時間は突如として妨害されることになる。 『ゆっくりしてってね! ゆっくりしてってね!』 突如ハウスの中に響く絶叫。 『ゆっくりしてってね! ゆっくりしてってね!』 「ゆ、ゆっくり?」親まりさは目が覚めた。覚めたものの状況が分からずぼーっとしてる。 『まりさくん! まりさくん!』 親まりさは体を揺すられた。 「や、やめるんだぜ。あんまりゆすられるとへんなきぶんになるんだぜ?」 親まりさがようやく覚醒するとハウスの扉が開けられて人間が中を覗いていた。 顔を赤らめた中年男性である。 『やっとおきらんれすか。もうあされすよ。』 親まりさはびっくりして外を見る。が、まだ外は夜だった。 「まだよるさんなんだぜ。まりさはまだねむいのぜ。」 『そんなことより、きいてくらさいよ、まりさくん!』 親まりさはハウスの中を見渡す。他の家族は既に起きていて、2ゆんのおちびちゃんはれいむの陰に隠れている。 親れいむはというと不安そうな表情を顔に浮かべている。 本当のことをいうと、親まりさは相手にしたくはなかった。 だが、人間とゆっくりとの力量差を把握している彼女にとって、 下手なことをいって家族に危害を加えられてはかなわない。 おとなしくしていて、早く帰ってもらおうと親まりさは考えた。 「まりさたちはわるいことをしていないのぜ、おじさん?」 『う、うう』 おじさんは突然うめきだした。 『娘が、グレたんれすよーーー』と大声で叫ぶ。 「ち、ちょっと、こえをちいさくしてほしいのぜ。」 『ごめんらさい。』 そしておじさんはボリュームをやや下げて、話し始める。 『昔はれ、とっても可愛かったんれすよ。そこのおちびちゃんみたいにれ。 れもね、れも、もう$%JKOったjIokれすよーーーーーー』 おじさんは泣き始める。呂律がまわっていない上に、話の内容も親まりさにとってよくわからない。 「まりさは、ゆっくりだからよくわからないのぜ。もういちどせつめいしてほしいんだぜ。」 知能レベルが小学生の低学年であるゆっくりにとって、 呂律の回らない酔っぱらいの話を親まりさなりに理解するのはかなり長い時間がかかった。 おじさんの話を要約するとこうだ。 おじさんには娘さんというおちびちゃんがいた。 子供の頃はゆっくりしていて可愛かったが、最近はゲスになってしまった。 「ウザいんですけど?」「臭いから近寄らないでくれる?」 とおじさんがゆっくりできないことを平気で言うようになってしまった。 毎日、仕事という名の狩りで娘さんにご飯を食べさせているのにもかかわらずだ。 また、娘さんが飼いゆっくりとしてまりさを飼っているが、 そんな娘さんとおじさんの会話を聞いているせいか、すっかりおじさんを奴隷扱いしているそうだ。 「くそじじいはとっととごはんさんをもってくるのぜ。」「おおくさいくさい。」 あと仕事も、ぶかさんとぶちょうさんの間でゆっくりできないそうだ。 『もういやなんれすよ。おじさんは疲れたんれす。』 このような愚痴を親まりさは、 「おじさんはたいへんなんだぜ。」 「それはひどいはなしなんだぜ。」 となんとなく相槌をうちながら聞き手に回っていた。家族を見ると、 妹まりさは泣きだし、親れいむがすーりすりで慰めていた。 姉れいむは、興味を持ったのか親まりさと一緒におじさんの話を聞いていた。 『れいみゅちゃん。』おじさんが姉れいむに問いかける。 親まりさは姉れいむが下手な事をいっておじさんを怒らせないか心配になる。 「うん、おじさんなあに?」 『れいみゅちゃんは、お父さんは好きれすか?』 この質問に親まりさは姉れいむがなんて答えるのかドキドキする。 「うん、だーいしゅき。」姉れいむはにっこりして答える。 親まりさはほっとした。 『そうか、よかったなあ、まりさ。』 「う、うん。」親まりさは答える。 『れいみゅ、その気持ちを忘れてはいけないれすよ。』 「うん。」親まりさには、うなづいた姉れいむの姿がぼやけて見えた。 (こんなゆっくりとした、おちびをもってまりさはしあわせーだぜ。) 親まりさは親れいむを振り返る。 親れいむは泣き疲れて眠ってしまった妹まりさをもみあげで優しく撫でていた。 そして、親れいむの笑顔はとってもゆっくりとしていた。 『よし、親子の愛を確認したところれ、おじさんはお歌を歌うよ。 ♪ゆっくりの日~ まったりの日~』 おじさんは、大声で調子はずれの歌を歌い始めた。 (うるさいんだぜ、おちびがまた起きちゃうんだぜ。) 辟易する親まりさ。だがそんな彼女の思惑をよそにおじさんは歌い続ける。 とそこへ。 『課長! 課長! 何してるんですか、こんなところで。』 別の人間がまりさ達の前に登場した。おじさんよりは若く、お兄さんの年齢である。 『おお、山田君れはないれすか。なんれすか?』 おじさんの知り合いのようだ。 『なんれすか、じゃないでしょう。ゆっくりと絡んでる場合じゃないですよ。 終電に間に合わなくなりますよ!』 『よしわかった! 今日はオールだ!』 『行きません。帰ります。』 お兄さんはおじさんの肩を組む。 『まりさたち、すまなかったな。うちの課長が迷惑をかけたみたいで。』 お兄さんがまりさ達に話しかけてくる。 「ゆう、おじさんもたいへんなんだぜ。」 親まりさは答える。 『お詫びと言ってはなんだが、これをあげるよ。』 といってお兄さんはカバンからソフトキャンディー(ハイ○ュー)を4つ取り出し親まりさの前に置く。 『課長、起きてください。帰りますよ。』 『ゆっくりかえるよ。ゆっくりぃ~』 お兄さんはおじさんの肩を支えながら公園の出口の方へと歩いて行った。 嵐が過ぎ去ったあとは、いつもの夜の公園に戻る。 まりさの前にはソフトキャンディー4粒があるだけだ。 (いまのはなんだったんだぜ? ゆめだったんだぜ?) 親まりさがソフトキャンディーををしばらくぼーっと見ていると、 親れいむと姉れいむが親まりさを覗き込んできた。 今の事は、よくわからない、よくわからないがとりあえずは、 「ゆう、ゆっくりねるよ。」 おじさんが来る前と同じように一家4ゆん顔を寄せ合い眠りについた。 こうしてまりさ親子を襲った長い夜は終わった。 そして次の日、ソフトキャンディーがおちびちゃんの歯にくっついて大変な目に合うのだが、 それはまた別の話である。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 今まで書いたもの だってそういったじゃん 最後の晩餐 ありす殺ゆん事件 超高級れいむと食用れいむ 選択肢 投票 しあわせー! (140) それなりー (37) つぎにきたいするよ! (69) このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/290.html
幻想郷でもひときわ目立つ真紅の建物。紅魔館。 悪魔の館と名高いそこには、とても綺麗な紅い髪をした妖怪がいた。 紅美鈴。 紅魔館の門番である。 美鈴は困っていた。 ここ連日、なぜかゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙の大群が、この紅魔館を目指して襲撃してくるのだ。 一週間で、少なく見積もっても500匹は叩き潰したはずだ。 ゆっくり種というのは、簡単に言えば「動いて喋る饅頭」だ。決して妖怪ではない。 岩魚坊主と似た類の妖怪かと思っている人間もいるが、絶対に違う。あえて言うならナマモノだ。 ただの饅頭にスペルカードルールは適用されない。 わざわざ弾幕を張る必要がない戦闘。いや、殺し合い。むしろ虐殺。 拳打の一撃、足刀の一撃が文字通り必殺となって、ゆっくりたちを引き裂いていく。 美鈴は久しぶりの運動に心身が喜ぶのを感じていた。が、それも最初の二、三日だけだ。 四日目からは弾幕を織り交ぜた。 運良く接近してきたゆっくりたちも打撃で潰した。 五日目はもう、弾幕を張るのも億劫になって、気でやたらめったら吹き飛ばした。 その技に名前はなかったが、あえてつけるなら、かめはめ……とかそんな感じで吹き飛ばした。 そして、八日目の今日、美鈴は門を離れ、紅魔館周辺の森林に潜りこみ、元凶を探していた。 今、紅魔館門前には門番隊六大天王が陣取っている。 六大天王とは、門番メイドの中でも選りすぐりの精鋭で、虹符「彩虹の風鈴」の後に出てくるあいつらのことだ。 妖精ではあるが、ゆっくりなんぞが束になっても太刀打ちできるような相手ではなかった。 鬱蒼と茂る木々の間を、紅い髪が流れるように移動していく。 美鈴の服は暗緑色なので、森林のなかでは、普通に保護色の役目を果たしていた。 なんという、偶然ッ!!! やがて美鈴の広域レーダーに特異な気配がひっかかった。多い。200は蠢いている。 美鈴はこのレーダーに「円」と名前をつけている。最大半径約2kmのスグレモノだ。紅魔郷ではこれを使って、接近する紅白と白黒の迎撃に向かった。 結果は言わずもがな。 やがて、森の中でも一際暗い、多くの葉に包まれた場所に出た。 食肉植物が生息していても不思議ではないほどだ。美鈴はそこらじゅうに点在するゆっくりの姿を認めた。 それぞれが談笑し、思い思いにゆっくりしている。全てひとつの群れのようだ。 美鈴は一度目を閉じ、みっつ数えてから目を開いた。すでに戦闘モードに移行している。 「……っ!!」 不意打ちに声をかける馬鹿はいない。 美鈴は飛び出し、着地すると同時に強く足を大地に打ちつけた。 森が揺れる。 数多の木の葉がひらひらと落ち、リスなどの小動物は巣へと逃げ帰り、鳥の群れは空へと飛び立っていった。 美鈴はあたりを見回すと、ゆっくりに生き残りがいないことを確かめた。 今のは、足から放出した膨大な気を、大地に伝播させて広範囲の敵を屠る必殺の魔技だ。 人間が死ぬ程度の威力を持たせ、放った結果、先ほどまで存分にゆっくりしていたゆっくりたちは、皆そのままで死んでいた。 まるで死んでいるとは思えないほどに綺麗な顔をしていた。 「!?」 美鈴は気配を察知し、向き直る。そこは大きなしだの葉で巧妙に隠されていたが、洞穴があった。 巨大な気配はそこから出ていた。 よもや今ので死んでいないとは!そう思い飛び込む。 「んなにぃっ!?」 驚愕の声。その洞穴には巨大なゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙がいた。 「だれ?ここはれーむとまりさのおうちだよ!ゆっくりでていってね!」 「まりさたちはおねーさんとゆっくりしてるひまなんかないの。じゃぁね!ばいばい!」 大きい。 高さは美鈴よりも高い。2メートルほどだろうか? その表面に触る。どこか滑らかで確かな存在感を持ったそれは、もはや饅頭の感触ではなかった。 「あんたたち、身篭ってるね?」 「ゆ?み=ご?もってないよ?」 「そんなゆごすのいきものなんかしらないよ」 「あ~~~、お腹ン中に子供がいるでしょ?」 なんだか意味の分からないことを言い返されたので、馬鹿でもわかるように言い直した。 とたんに朗らかになる二匹。子供が出来るのはどんな生き物でも嬉しいことなのだろう。とても幸せそうだ。 美鈴は慎重に気配を探る。これは? 「……やたら重なってる?ひょっとして」 思い浮かぶは先刻の光景。洞穴の前、おそらく、ゆっくりできる庭としていたであろうあそこに、思い思いにたむろしていた多数のゆっくり。 「外にいたやつらは、あんたらの子供?」 「ゆ!?こどもたちにあったの?どう、どう?」 「と~ってもかわいかったでしょ?ゆっくりめでていってね!」 「全員ブチ殺してやったわよ」 静寂。 「どぉしてそんなことしたのぉぉぉおおおぉぉおっぉっっ!!!」 「ゆるせない!ゆるせないよ!!おねー、おばさんはゆっくりしね!!」 怒気が膨れ上がった。洞穴内で渦巻くそれはまるで暴風のようだ。 「ハッ!望むところよ!こちとら食えない饅頭を叩き潰す日々にくさくさしてたんだ!お前らで鬱憤を晴らさせてもらう!!」 怒っているのはこちらも同じ。 この洞穴で、2メートルものゆっくりは飛び跳ねることは出来ない。天井がすぐそこにあるのだ。 では、この二匹の巨大ゆっくりたちはどうしたか?簡単だ。ただ美鈴に向かって倒れただけ。 しかもここまで巨大化するまでに、それなりの経験を蓄積したのか、空気を吸い込み出来るだけ転がりやすい形になっている。 相手が人間であればそれで終わっていただろう。そう、ただの人間であれば。 しかし紅美鈴は妖怪だった。 それをただ手を添えるだけで止めてしまった。 「ゆ?」 「ゆゆ?」 「てめぇら、おもてぇ出ろぉ~っ!!!」 巨大ゆっくりの表面を掴み、思い切り引っ張って無造作に投げ飛ばした。 「ゆぅううぅぅ~~~っ!?」 「ゆゆゆゆゆ~~~!?」 暗い洞穴を、地面と平行に飛んで生き、入り口を覆っていた葉を突き破り、陽光の下にさらされた。 「ゆげぇっ!?」 「ゆっぐ!!」 ずんっと音を立てて着地する巨大ゆっくり。 「ゆゆゆゆゆ」 「ゆ~~~」 痛みで身動きがとれないのか、ぶるんぶるんと揺れている巨大な塊。追って洞穴から飛び出す紅い髪の妖怪。 その澄んだ青い目は殺る気に満ち満ちていた。 だが巨大ゆっくりはすでに戦意を喪失していた。最大の攻撃だった押しつぶしが通用しなかったのだ、まだ飛び掛るというのが残っているが、身重でそれはできない。 「ゆっゆ!ゆっくりゆるしてね!ゆっくりごめんなさい!」 「おばさんっていったことはあやまるよ!ゆっくりさせてね!!」 「…………」 つかつかと近づく美鈴。そのまま平手打ち。中身が詰まっているからとてもいい音が森に響いた。 「ぶぎゅぅぇっ!」 「れいむぅうぅっ」 「お前も!」 「ゆげぇっ!」 「まりさぁぁああっ」 「うっさい!」 このまま殴り殺しても美鈴の気が晴れない。ぴたぴたと二匹の表面を撫でる美鈴。 「ゆっゆふふふふっ!ゆふっゆふっ!くっくっくすぐぐぐぐ」 「ゆっふっふふふふふ!や、やめてね!くすぐったいよっほほほほほ」 「ここか」 ずぶおぉっ! 「……っ!!」 思い切り息を吸う巨大ゆっくり霊夢。次の瞬間、 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」 「れ゛、れ゛い゛む゛ぅう゛ぅ!」 美鈴の腕は巨大ゆっくり霊夢の腹に刺し込まれていた。 いや、刺さっているわけではない。もともと開いている穴に突っ込んだだけだ。 口ではない、もっと下。そう、産道にだ。 そのままもぞもぞと動かす。 「う゛あ゛っ!う゛あ゛っ!う゛あ゛っ!う゛あ゛っ!う゛あ゛っ!」 「へぇ~、あんた達の中ってこんなんなってるんだぁ~」 「や゛、や゛め゛でぇ~~~!れ゛い゛む゛がじん゛ぢゃう゛ぅう゛ぅぅぅ~~~!!」 「あ、これってあんたたちの赤ん坊?」 「ぶぶぶぶぶぶぶぶ」 「な、おねーさん、なにするきなのぉっ!?」 「ごたいめ~~~ん♪」 じゅりゅりぃっ。 美鈴の細腕の先には粘液にぬめったゆっくり霊夢が掴まれていた。 しかしまだ早かったのだろう、未熟児どころか、まだ目、鼻、口が開かれておらず、皮と髪の区別もなくリボンなどは影も形もない。 「なに、こいつ。変なの」 「れ、れいむのあ゛がぢゃん、かえ゛ぢでぇ。お゛な゛がに゛も゛どじでよぅ、まだゆっぐりざぜないどだめなのぉお」 「ふ~ん」 「がえぢでぇっ!もどじでよぅっ!!」 「うるさいなぁ。ほれ」 美鈴は浮かび上がると、手に持った物体を巨大ゆっくり霊夢の口に入れてやった。 「!?!!?」 「ちゃんとおなかにもどさないとね」 そのまま腕を肩まで突っ込んで、喉の奥まで入れてやる。 「お、おねぇいさ~~~ん!なにじでるのぉおおおおお!!」 巨大ゆっくり魔理沙が蒼褪めながら叫んだ。巨大ゆっくり霊夢のほうは、目を紅白させてがくがくと震えている。 「ん?おなかに入れてあげたんだよ?アレが自分で言ったでしょ、お腹に入れてって」 「ち、ちがうよぅぅおぉぉおおおぉぉお!!ちがうおなかだよおぉぉぉぉぅぅぅっぅ!!!」 「へー、そうなんだ~」 「う゛っう゛あ゛っう゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ」 巨大ゆっくり霊夢がいまさら叫ぶ。見れば涙を流しているではないか。身体が大きいから流す量も相当で、すでに地面には水溜りが出来上がっている。 「そういえばあんたたちの中に何匹詰まってんのさ?気配が重なり合っててよくわかんないんだよね、50匹くらいかなぁ?」 「っぴぃ!?」 「あっははははは!なぁにぃ?ぴぃって、鳥のまね?」 「や、やめてね!おねがいだからやめてね!」 「あんたは後回しだよ」 美鈴は巨大ゆっくり霊夢に向き直った。 「そうそう、逃げても無駄だよ。あんたたちの臭いは覚えた」 再び刺しこまれる美鈴の腕。 「ゆっぎゃぁああぁあああぁぁぁあああああっ!!!」 「そぉれ!いっぴきにひき~さーんびきよぉ~んひきごひきろぉ~っぴきなぁな~ひき」 「あ゛う゛っあ゛う゛っあ゛う゛っあ゛う゛っあ゛う゛っあ゛う゛っあ゛う゛っ」 お腹の中をかき回しては、引きずり出して、ごみのように投げ捨てる美鈴。 べちゃりべちゃりべちゃり、と音を立てて崩れていく未成熟のゆっくりたち。 二匹の目には紅い髪をした悪鬼にしか見えないに違いない。 おおよそ5分後、鬱蒼としていた植物たちは、饅頭の色をしたねろねろの物体に蹂躙されていた。 「ん~~~?もう打ち止め?赤玉なんか出てないゾぉ~?」 美鈴は、産道に刺しこんだ腕を肩までめり込ませて中を探っている。 巨大ゆっくり霊夢の胎内はこれ以上ないほどにかき回されていた。 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 「おーい、話聞いてる?」 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 「蓄音機か?」 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 「いや、もういいから」 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりじでっ!!」 美鈴は肩口まで突っ込んだ腕をそのまま持ち上げるように動かし、巨大ゆっくり霊夢を縦に引き裂いた。 顔面を真一文字に切り裂かれ、餡子をブチ撒ける巨大ゆっくり霊夢。死んだのか、そのままぺちゃりと潰れていった。 「あらら、潰れちゃった。まぁ中身もあんまり残ってなかったしねぇ」 まるで血振るいのように、腕を振り粘液を落とす美鈴。すでに巨大ゆっくり魔理沙に向かっている。 「ゆふふゆふゆふゆふふふ」 気が触れてしまったのか、薄ら笑いを続ける巨大ゆっくり魔理沙。口からはよだれが垂れていたが、涙は枯れていた。 そんな巨大ゆっくり魔理沙にぽんっと軽く手を触れると、焦点の合っていない目が次第に鮮明になっていった。 狂気の世界に旅立った巨大ゆっくり魔理沙を正気の世界に引き戻したのだ。 気を扱う程度の能力ならではの荒業であろう。 「ゆ?ゆゆゆっ!?れ、れいむ?れいむ、だいじょうぶ!?」 「んにゃ、お亡くなりになりました」 「れ、れ゛い゛む゛ううううう!!!」 絶叫。 しかしそれに応えるものはもういない。 「いやぁ、50匹は詰まってるとは思ってたけど、凄いね!90匹近く入ってたよ」 「ゆ、ゆっくりさせてね!おねがいだよぅ!!おねがいじばずっ!!ぎれ゛い゛な゛お゛ね゛ーざん゛!!」 「わかった。ゆっくりしてあげるね♪」 ずぶり。 「ゆっぎゅぅうううぅうぁあぁぁぁぁっん!!!」 ゆっくりと産道に刺し込まれてくる長い異物。巨大ゆっくり魔理沙の視界がぱちぱちと発光したように眩しくなる。 神経がショートしているのだろう。 「お、いたいた。そぉれ!い~ち!にぃ~い!さぁ~ん!よぉ~ん!ごぉ~お!ろぉ~くぅ!なぁ~な!」 巨大ゆっくり魔理沙のお願いどおり、ゆっくりと取り出していく美鈴。おおよそ10秒に一匹のペースだ。 巨大ゆっくり霊夢と同じだけ入ってるとして、約15分も地獄の責め苦を受けることになる。 そして、美鈴が極力正気を保つように気を操作しているので狂ってしまうことも出来ない。 「あ゛っぎゅん!あ゛っぎゅん!あ゛っぎゅん!あ゛っぎゅん!あ゛っぎゅん!あ゛っぎゅん!あ゛っぎゅん!」 巨大ゆっくり魔理沙はなんで自分達がこんな目にあっているのかわからなかった。 約15分経過。 巨大ゆっくり魔理沙も随分とぺっちゃりとしていた。皮がたるみ、当初の張りと艶が夢だったかのようにべろべろだ。 美鈴の背後には、まだ多くの粘液に包まれた物体が点在していた。 やはり打ち止めなのか、巨大ゆっくり霊夢の時と同じく肩口まで産道に腕を突っ込み、胎内を引っ掻き回している。 「ぼも゛っ、も゛う゛や゛べでね゛っ!も゛う゛な゛に゛も゛な゛い゛よ゛ぅ!!ぜん゛ぶでぢゃっだの゛ぉぅっ!!」 「う~ん、こっちも100の大台にはいかなかったかぁ、残念」 「お゛ね゛がい゛でず!ゆ゛る゛ぢでぐだざい゛!ごべん゛な゛ざい゛!ゆ゛づじでぐざざい゛!」 「もう怒ってないよお」 「……ぼん゛どぅでづが?」 「もちろん」 「あはっ、あははっあははははは。ゆっくりしていってね!!!ゆっくりさせてね!」 「さ、次は全部お腹に戻してあげるね♪」 「えっ」 「お友達のゆっくりの分もぜ~んぶ、お腹に戻してあげる♪」 「い」 「い?」 「いやぁあぁぁぁああああああああっ!!!ゆっくりさせてね!ゆっくりさせてね!ゆっくりさせてね!ゆっくりさせてね!」 「うぉい、またか」 「ゆっくりさせてね!ゆっくりさせてね!ゆっくりさせてね!ゆっくりさせてね!ゆっくりさせてね!ゆっくりさせてね!」 「ふぅ」 「ゆっ!」 美鈴のしなやかな人差し指が巨大ゆっくり魔理沙の眉間に深々とめり込んでいた。 たったそれだけで巨大ゆっくり魔理沙は声を発することが出来なくなってしまった。 「……!……!!~~~~~!!!~~~~~!?」 口をぱあくぱあくと動かすがそこからは何の音も発しはしない。 「さぁ、お片づけの時間ですよ?」 美鈴の蒼い目がぞっとするほど綺麗に深まった。 終わり。 美鈴大好きです。でも変にノってしまって、こんな話に。美鈴好きな人たち、ごめんなさい。 著:Hey!胡乱 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/838.html
「少年と木ゆっくり」 一本の木ゆっくりがありました。 ゆっくりには、大好きな男の子がいました。 男の子は毎日、ゆっくりのところへやってきました。 葉を集めては冠を作り、森の王様ごっこをしました。 『すっぎょくゆっきゅりできるよ!』 『しあわせー♪』 毎日、幹に登り、枝からぶら下がり、子ゆれいむを食べました。 『ゆ? ゆっくりしていっでびゅっ!?」』 『ゆ~? ゆっきゅりちょんでべべべボボボボゴボ…』 『あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!!』 『もっちょゆっきゅりし…ちゃ……か…』 『でいぶのあがぢゃんがぁあああああああ!!!!! 』 かくれんぼもしました。 『ゆっ、れ゛い゛むー、どごなのー? がぐれでないでででぎでよぉぉぉ』 『でいぶ?でいぶはどご? ごえ゛じがぎごえないよぉぉぉ』 『う゛わぁ゛ぁぁぁがいじわるじないでぇ゛ぇぇ』 『ゆ゛っぐりじよう゛よぉぉぉっ゛っっ』 そして疲れるとゆっくりもたれかけて陰で眠りました。 『ゆぐっ!!ぐるじいよ!!おにーざんだずげで!!』 男の子は、ゆっくりがとても好きでした。 ゆっくりは幸せでした。 『ゆっぐ…いっじょにゆっぐりじだいよぉ……!!』 しかし時は流れて、 男の子は大きくなり、毎日やって来ましたがゆっくりは、しばしば一人ぼっちでした。 『どうぢでむぢずるのおおおお!!ゆっぐりじでいっで……あぁぁぁぁぁなんでいなぐなっぢゃうのおお゛お゛お゛!??』 ある日、男の子はゆっくりのところへやってきました。 ゆっくりは言いました。 『いらっしゃい、ぼうや、ゆっくりのぼって、ゆっくりにぶらさがり、ゆっくりかげであそび、たのしんでおいきなさい。』 「僕はゆっくり登りをして遊ぶには大きくなりすぎたよ。」 男の子は言いました。 「僕は買いたいものが色々あるんだ。お金が欲しいんだ。」 「君は僕にお金をくれるかい?」 『ごめんなさい』 ゆっくりは言いました。 『れいむはおかねをもっていません。』 すると男の子はゆっくりに登り、子ゆれいむを何匹か加工所に持って行きました。 『ゆゆっ、おそらをとんでるみたいだよ!ゆ、ゆゆ?ゆあああああぁぁぁ! おに゛いさん、どごいぐの~~! ゆっぐりでぎないよぉぉぉ!!!』 『いやあぁ゛ぁぁぁぁ゛ぁおうじがえ゛るるぉぉぉぉ』 『ゆ゛っぐりざぜでえぇぇ゛ぇぇぇ』 『や゛べでよ~でいぶのあがぢゃんになにずるのおおおぉおぉぉぉぉ~~~~』 ゆっくりは泣きながら喜んでいました。 ところがそれから長い間、男の子はやって来ませんでした。 ゆっくりは寂しがりました。 『どうぢでむぢずるのおおおお!!ゆっぐりじでいっで……あぁぁぁぁぁ!??』 そうしたある日、ふいに男の子がゆっくりのところへやって来ました。 ゆっくりは喜びにふるえて言いました。 『い、いらっしゃい、ぼ、ぼうや、ゆっくりのぼって、ゆっくりにぶらさがり、ゆっくりかげであそび、た、たのしんでおいきなさい。』 「僕は忙しすぎて、ゆっくり登りをしてる暇はないんだよ。」 男の子は言いました。 「僕は暖かい家が欲しい。」 「妻と子供が欲しいんだ。だから家が必要なんだ。」 「君は僕に家をくれるかい?」 『いえはもっていません。もりがれいむのいえですから。』 ゆっくりは言いました。 すると男の子は枝を切って持って行きました。 『ゆ゛っくりしてい゛ってね゛!!!!ゆ゛っくり゛してい゛ってね!!!!』 『ひ”ぃ!ひぃいいいいーーーーーーー!』 『どぼじでごんな゛ごどずるのぉぉぉぉ?!』 ゆっくりは泣くほど幸せでした。 ところがそれから長い間、男の子はやって来ませんでした。 『どおぢでむぢずるのぉぉお!ながよぐゆっぐりじようよぉおぉ!!!」 』 男の子が再びゆっくりのところへやってきた時、 ゆっくりは嬉しさのあまり言葉が出ないほどでした。 『い、いいいいいらっしゃい、ぼぼおっぼぼおぼ、ぼうや。』 ゆっくりはささやきました。 『ゆ……おねがいだがらゆっぐりざぜでよぅ!!』 「僕は年をとりすぎたんだ。それに哀しくて、とてもそんな気にはなれないよ。」 男の子は言い放ちました。 「僕はボートが欲しいんだ。どこか遠くへ僕を運んでくれるボートが。」 「君は僕にボートをくれるかい?」 『れいむはここからうごかないからボートをもっていないの。』 ゆっくりは言いました。 男の子はすぐに幹を切ってボートを作り、遠くへ行きました。 『……うっ、うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ!!! いだい゛っ゛、いだあ゛あ゛ あ゛あ゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛っっっ!!!』 『いだいよぉおおお!! いだいよぉおおお!』 『だれかだずげでぇえええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!』 ゆっくりは幸せのあまり泣いて喜びました。 けれど、本当はちがいました。 それから随分と年月が経って、男の子は再びゆっくりのところへやってきました。 『ごめんなさい、ぼうや』 ゆっくりは言いました。 『あなたにあげられるものがもう何もないの。』 『子れいむたちもいなくなってしまった。』 「僕の歯は子れいむを噛むには弱すぎるよ。」 男の子は言いました。 『えだもなくなってしまった。もうぶらさがらせてあげられない。』 「僕は枝にぶら下がるには年をとり過ぎているよ。」 男の子は言いました。 『みきもなくなってしまった。もうのぼらせて………』 「僕はゆっくり登りをするには疲れ過ぎてしまったよ。」 男の子は言いいながら、木ゆっくりに腰掛けました。 『おも゛い゛ぃ゛ぃぃ~!!!ずわらな゛い゛でぇぇ~!!!』 『づぶれじゃうーーー、はやぐどい゛でぇぇ~!!!』 そのうち、ゆっくりは跡形もなくつぶれてしまいました。 ゆっくりは初めて幸せでした。男の子から開放されて、生まれて初めてようやくゆっくり出来たのです。 (END) あとがき こんな良く分からない駄文を最後まで読んでいただき、まことにありがとうございます。 木れいむを見たら、急に中学時代の英語の教科書に載っていた「The giving tree」という童話を思い出し、勢いで書いて、勢いで初投稿してしまいました。 結局、いまいち何がしたかったのか良く分からない…、ゆっくりした結果がこれだよ!!精進せねば。 自分の中での木ゆっくりは、高さ10メートルぐらいで、秋に平均20個ほどの子れいむが生ります。そして、冬を越したら、十分育った子れいむ達が巣立っていくのですが、10メートルから落ちて無事な饅頭はありませんよね。 Q.なぜ、木ゆっくりは、最後まで男の子に従っていたのか? A.きっと、男の子は笑顔でライターや玄翁を振り回しながらやって来るんですよ。「やあ、今日もゆっくり遊んでくれるよね!よね!」 普通のゆっくりと違って逃げられない(まあ、通常ゆっくりでも人間からは逃げられないでしょうが)ので、定期的に来る男の子に対して、ひたすら下手に出るしかなかった、と。 しかし、これでは、最後にゆっくりが「しあわせーー」になってしまっているorz このSSに感想を付ける